雑記398. 2020. 9.12
“ 緑ヶ丘公園のアベマキ その1 ”
 緑ヶ丘公園 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市、敷地面積〜7.8ha ] は、私がドングリに興味をもつキッカケになった場所です(*)。同園には、ほぼ全域にたくさんのアベマキが植栽されていますが、特筆すべきはその個体数ではなく、それらが結実するドングリの形態の多様性です。

 初めてここを訪れた時には、緑ヶ丘公園の造園設計者の中にアベマキのドングリに並々ならぬ関心をおもちの方がいらっしゃって、一本一本厳選した個体を植栽されたのではないかと思えるぐらい、様々な形態のアベマキのドングリがあることに本当に驚かされました。その時の印象は、20年以上経った今でもまったく変わっていません。
* セクション1を参照願います。

 京阪神でアベマキのドングリの多様性を実感できる場所と言えば服部緑地 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] ですが、私の通勤経路にあるこの緑ヶ丘公園とその近傍に位置する摂津伊丹廃寺跡は、服部緑地に優るとも劣らないアベマキのドングリの豊庫です。
 ということで、今後不定期ではありますが、他ではあまり目にすることがない、ご当地ならではの特徴的なアベマキのドングリをこのセクションで紹介していきたいと思っています。


 今回紹介するのは、初めて見た時にはクヌギだとばかり思っていたのに、実はアベマキだったというドングリです(図8-398-3参照)。球体というよりも少し扁平なところがとってもキュートで、かわいいもの好きの私にとって園内でも一押しのドングリです☆

 毎年9月の上旬に結実しますが、いつも生りが悪く、多い時でも40個ぐらいしか落下しません。この個体の周囲は樹が鬱蒼と茂っていて薄暗く、ドングリも樹上の高所でしか実らないので、結実したありのままの姿を撮影できないのがとても残念ですが、樹下には落葉が山積している箇所もあって、比較的きれいな状態のドングリが採集できます。

 堅果の首回りに着目すると、短いながらもアベマキの首に近い特徴を有していますが、全体の形や大きなへそを見る限り、典型的なクヌギの堅果そのものです(図8-398-4 上段参照)。また、黒っぽい焦茶色の果皮は肌理が細かく、触感がサラサラしているところも、ゴツゴツしたアベマキのイメージとは随分異なります。このように堅果の形態はクヌギによく似ていますが、堅くて刺々しい鱗片に覆われた奥行きが深いお椀形の殻斗を見れば、これがアベマキのドングリであることは一目瞭然です(図8-398-4 下段参照)。