雑記397. 2020. 9. 9
“ 6果のように見えますが... ”
 花軸にある複数の殻斗の元になる器官同士が合着する事象について、これまでこのHPの中で幾度か紹介してきました。但し、合着した殻斗の元になる器官から出現した殻斗同士が合着するかどうかについては、未だ確認できていません。

 そんな中、高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にあるマテバシイで、この事象を検証するのにうってつけのサンプルが見つかりました
(*)。それは、花軸にある2つの3果の雌花序の殻斗の元になる器官同士が合着したもので、おまけに各々の雌花序から1つずつ供出された雌花同士も合着していたのです(図8-388-1 左側参照)。
 雌花同士が合着(2つの雌花が同じ花被/花床で包まれた状態)しているということは、少なくともこれらが成長した堅果は1つの殻斗によって包含されるはずですから、成長したこれらの殻斗同士が合着する可能性は非常に高いと思われます。そんなわけで、私としてはこのサンプルの今後の動向に並々ならぬ期待を寄せています。
* 雑記388を参照願います。


 先日同園を訪れた時、このサンプルの状況を確認したところ、順調に成長していたのでホッとしました(図8-397-1 右側参照)。このまま何事もなく来年の花期(6月頃)まで成長してくれれば、殻斗同士が合着するかどうかハッキリするのですが、実はこのサンプルの検証結果を事前に示唆するようなドングリが同じ個体から見つかったのです。

 それは、1つの殻斗が6つの堅果を包含したドングリでした(図8-397-2、図8-397-3参照)。パッと見は6果のドングリかと思いましたが、果軸と殻斗の接合部分を見ると普通の3果の接合面積の倍近くもあったので、たぶん図中の番号1〜3の殻斗から成る3果と番号4〜6の殻斗から成る3果が合着したものではないかと思われます(図8-397-4参照)。

 現時点では明確な結論を出すことはできませんが、同じ個体から殻斗同士の合着を示唆するドングリが見つかったことで、それまで私が予想していた異なる雌花序の殻斗同士が合着する可能性が、50%ぐらいから一気に95%以上まで急上昇しました!