雑記386. 2020. 6. 2
“ 高次の多果の両性花です ”
 先日、高次の多果の雌花序を確認したツブラジイ(*)を再度チェックしたところ、あらたに4果以上と思われる両性花(両性形態の花)が見つかりました。
* 雑記385を参照願います。
 この個体では、以前からしばしば多果の発現を目撃してきましたが、普通のものに比べて取り立てて発現率が高いわけではありませんでした。ただ、今年は例年よりも少しばかり多果の発現率が高いのは確かで、とりわけ多果の両性花がたくさん見られました(図8-386-2参照)。

 
 両性花の中には、一見すると単果のようなものでも、花柱が立つ位置や形態から見て、2つ以上の近接した雌花で構成されていることが判りました(図8-386-3参照)。上段の両性花に見られる6本の花柱は、1つの雌花の花柱とは思えないぐらい纏まりがなく、広範囲に分散して立ち上がっています。また、下段の両性花には7本の花柱がありますが、こちらも各々の配置を見ると、複数の雌花から立ち上がったものである可能性が高いと思われます
(**)
** 単果の両性花の典型的な例は、図8-386-1を参照願います。

 
 さらに、図8-386-4は殻斗の元になる器官に2つの雌花と1つの両性花が咲いた雌花序です。右下の写真は右上の写真の中央にある両性花を花柱の側から撮影したものです。矢印で指示した花柱は、中央にある3本の内の1本の外側に立っていることから、この両性花も2つの雌花で構成されたものである可能性が高いと思われます(***)
*** 雑記301を参照願います。


 最後は、今回見つけた両性花の中で比較的4果と判別しやすいものです(図8-386-5参照)。中央にあるのが両性花で、その両側にあるのが雌花です。開花してから少し時間が経過していたので、両性花の雄蕊の葯は既に脱落していました。この両性花の手前にある4本の花柱とその背後に立つ2本(図中矢印で指示)は、異なる雌花から立ち上がったものです。2つの雌花が極端に近接しているせいで、同じ花被/花床によってまとめて包まれています。