雑記375. 2019.12.18
“ 稀少なドングリを採りこぼしていました ”
 12月も中旬になり、京阪神ではアラカシ以外のドングリの落下がほぼ終了しました。今年の遠方でのドングリ探索も、先日訪れた高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] が最終で、来年の春までは自宅近隣の公園や緑地で探索を継続する予定です。

 今年最後に訪れた高塚山緑地は、2014年の秋に初めて訪れました。以来、遠方(*)にも関わらず自宅周辺のマイ・ドングリフィールド(**)と同じぐらい頻繁に足を運んできました。そして、今では私のお気に入りの採集スポットの一つになってます。ここには、京阪神ならどこでも目にすることができるありふれたドングリの木しかありませんが、他では見られない特殊な個体やユニークなドングリを結実するものが数多く見られます。例えば、このHPでしばしば紹介してきた多果を結実するコナラもその一つです。
  * 兵庫県神戸市は、自宅のある兵庫県三田市に隣接していますが、公共交通機関を利用すると現地に着くまで約2時間半を要します。
** セクション12を参照願います。

 ドングリの生る木は種類を問わず多果を発現します。但し、コナラについては外観上はっきりとわかる形態の多果(紐状殻斗等の不稔のものは対象外)を結実することは極めて稀で、仮に発現したとしても、多果を構成していた一部の雌花が退化消滅して、その痕跡だけを残した単果形態のものがほとんどです(図8-375-1参照)。

 冒頭で述べた高塚山緑地で多果を結実したことがあるコナラは、春に開花してから秋までの間に断続的に開花を繰り返します
(***)。こういう個体は、普通のものには見られない様々な形態的特徴(果軸、花、果実等)を有していますが、それらの中でもこの個体の特異性は際立っています。とりわけ、多果の発現率が非常に高く、4月に開花してから6月頃までは毎年たくさんの多果の幼果(図8-375-2参照)が見られます。そういう事例は開花を繰り返す他の個体でも稀に見かけますが、それらの中で多果を結実したことがあるのは、私が確認する限りこの個体をおいて他に例がありません(****)
  *** セクション22-4を参照願います。
**** 雑記278を参照願います。

 今年は、11月末の時点で多果の結実は確認できませんでしたが、コナラでは珍しい形態のドングリを見つけました(図8-375-3参照)。これは、果皮に貼り付くようにして、へそから首まで伸びた長い果軸の先に小殻斗がついた単果です。多果の発現率が極めて高いシラカシではそれほど珍しいものではありませんが、コナラではこれまで皆無でした。因みに、殻斗の元になる器官に1つの雌花と1本の花軸(先端に幼果有)が出現して、それらが共に成長するとこのような形のドングリが誕生します。


 ところで、先日はこの時期に成熟するアラカシのドングリを探索するために現地を訪れたのですが、その際にこのコナラの樹下をチェックしたところ、なんと合着した2果の堅果が見つかりました☆

 前回採集したのは、1つの殻斗が堅果を分離して包含するタイプ(堅果分離型殻斗)(***)でしたが、今回は1つの殻斗が堅果をまとめて包含するタイプ(堅果統合型殻斗)でした(図8-375-4参照)。 たぶん、人知れずこの個体の高所に結実したものが、ここ半月ほどの間に落下したものと思われます。ただ、落下してからだいぶん時間が経っていたせいか、果皮に大きな亀裂が入っており、完品にはほど遠い状態でした。

 今回はちょっぴり残念なドングリでしたが、これで5年間に2個も多果が結実したことになるので、これから先も不定期にコナラの多果が結実する可能性は高いと思われます。そう考えると、来年の春からの高塚山緑地の探索が、今から待ち遠しくてなりません♪