雑記371. 2019.11.27
“ Type15の殻斗、再び ”
 今月の9日で、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のウバメガシで、初めて多果ドングリを採集してからおよそ半月が経ちました(*)。その間、この個体から落下するドングリをくまなくチェックしてきた結果、私の予想をはるかに上回る大量の多果ドングリが採集できました☆

 採集した多果ドングリ(殻斗のみ)は全部で132個(図8-371-1参照)で、2果形態のものが99個、そして3果形態のものが33個でした。その内、多果ドングリを構成する全ての堅果が成熟したものは2個だけで、他は一部が不稔のものや紐状殻斗のものばかりでした。但し、紐状殻斗の中には、これまで見たことがないような興味深い形態が数多く含まれていました。詳細は後日あたらめて報告するとして、ここでは採集した多果ドングリの概要について紹介します。
  * 雑記368を参照願います。

 まずは、広義の2果のドングリです(図8-371-2参照)。広義としているのは、ドングリの殻斗が包含する堅果の数ではなく、そのもとになる殻斗の元になる器官に開花した雌花の数を果数としているからです(**)

 図中の(A)(B)は、今回採集した中でドングリを構成する堅果が2つとも成熟した2果のドングリの殻斗です。殻斗の内側に残るきれいな離層の痕跡は、堅果が無事に成熟したことの証です。(A)は1つの殻斗が2つの堅果をまとめて包含した堅果統合型の殻斗で、(B)は2つの堅果を分けて包含した堅果分離型の殻斗です。これら以外は、全て一方が不稔(C) [ 採集数:3個 ] か、あるいは紐状殻斗(D) [ 採集数:94個 ] のものばかりでした。
 ** 殻斗の元になる器官に2つの雌花が咲いても、一方が退化消滅して堅果を包含しない紐状殻斗になれば、外観上そのドングリは2果ではなくて単果になります。ですが、ここでは開花した雌花の数を果数として表現しているので、このようなドングリでも広い意味での2果、即ち広義の2果として扱います。

 
 もう一つは、広義の3果のドングリです(図8-371-3参照)。11月に入って最初に見つけた、2つの不稔の殻斗がリボンのような配置をしたもの(E) [ 採集数:2個 ] と一方が紐状殻斗のもの(F) [ 採集数:8個 ] については、多果を大量に発現するシラカシでも珍しい形態ですが、それらの中にType15の殻斗
(***)(G) [ 採集数:23個 ] が多数混在していました☆

 Type15の殻斗というのは、多果形態の殻斗を分類するために私が便宜上命名したもので、2つの紐状殻斗を含む3果の殻斗のことです。Type15は、シラカシでもこれまでに1つしか採集したことがないぐらい、多果の中でも最も発現率が低いものです。初めてこの殻斗を手にしてから今年で10年になりますが、シラカシ以外の樹種で目撃したことは一度もありませんでした。しかも、一つの個体からこれほどたくさん採集できるとは夢にも思っていませんでしたので、これらを採集している期間中は本当に興奮の連続でした☆☆
 *** 雑記015を参照願います。

 
 以上が今回採集した多果形態の概要です。次回は冒頭で述べた通り、シラカシでは見たことが無い奇妙な紐状殻斗についてご紹介します。お楽しみに!