雑記370. 2019.11.21
“ 首が無い? ”
今年の掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] は、例年になくウラジロガシが豊作でした。とりわけ、園内にあるウラジロガシの約半数にあたる6体には、たくさんのドングリが結実していました。それらの中から代表的なものを以下に紹介します。
まず、図8-370-1は毎年と言ってもいいぐらいコンスタントに結実する個体から採集したものです。たぶん、大きさも含めたこの形態が、ウラジロガシのドングリでは最も一般的ではないでしょうか。
次に、同園で採集できるドングリで、以前にこのHPで紹介したことがある丸いタイプです(*)。この個体は滅多に結実しませんが、今年は珍しく樹上を賑わせていました(図8-370-2参照)。特に、今回採集したドングリの中には、数年前に採集した時より大きなものがたくさん目につきました。
* 雑記199を参照願います。
最後に、これも同園で採集できるドングリとして紹介したことがありますが、図8-370-1にある典型的なドングリを一回り大きくしたようなタイプです(図8-370-3参照)。この個体は2〜3年に一度の割合で結実しますが、今年はこれまでに見たことがないぐらい大量に結実していました。大きさだけを強調しましたが、実はこのドングリ、他のウラジロガシとは違うある形態的な特徴を有しているのです。
ドングリの形態は個体間で様々ですが、殻斗や堅果の全体的な姿形だけでなく、それらを構成する微小なパーツの形態にも多様な世界が存在します(**)。
そういう視点であらためてこのドングリを観察してみると、首(***)に相当する部分が見当たりません(図8-370-4〜5参照)。ウラジロガシとよく似たアラカシの堅果には、首に相当する部分がほとんど無いものや、肩よりも下位に陥没したものをよく見かけます(***)が、ウラジロガシでは個体内のバラツキも含めて、類似する形態はこの個体でしか見たことがありません。
微小な構造の差異からそのドングリの個性を感じ取るプロセスは、ドングリの奥深さを堪能するのにもってこいです☆ 興味のある方は、一度試してみて下さい。
** セクション29を参照願います。
*** ここでは、果皮から露出した花柱は首に含めません。
**** 雑記115を参照願います。