雑記369. 2019.11.16
“ 楕円形が目印です☆ ”
万博公園 [ 所在地 : 大阪府吹田市 ] の自然文化園の一角に、鬱蒼と茂るツブラジイの林があります。毎年多くの個体がドングリを結実しますが、それらの形態の多様性と安定した結実量の点から、ここは京阪神随一のツブラジイのドングリの豊庫といっても過言ではないでしょう。
先日、そのツブラジイのドングリを採集するため、およそ一年ぶりに同園を訪れました。昨年の9月に西日本を直撃した台風21号によってここも甚大な被害を受けており、長期間広大なエリアが立入禁止区域になっていました。ツブラジイの林があるところもそのエリアに含まれていたので、その後どうなっているかと心配してたんですが、この度すっかり復旧した園内の様子を見て安心しました。
さて、ここのツブラジイのドングリは例年11月上旬〜中旬にかけて結実のピークを迎えます。この日も林の中では至るところにたくさんのドングリが落下していましたが、それらの中に、ある特定の個体から落下した珍しいドングリの3点セットを見つけました(図8-369-1参照)。
スダジイの多果ドングリは、多くの個体でしばしば目にしますが、同じシイ属でもツブラジイの多果ドングリはちょっとしたレア物です。でも、私の経験から言わせてもらうと、ツブラジイの場合は多果ドングリよりも1つの堅果の中に複数の種子が入った多種子のドングリの方がはるかにレアだと思います。
というのも、これまでドングリを採集してきて、スダジイではしばしば多種子のものを目にしてきましたが、ツブラジイは皆無でした。ツブラジイの単果(多種子)は普通の単果(1種子)に比べると明らかにサイズが大きいので、小さい単果(1種子)ばかりの中にあると、かえって目につきやすいはずなんです。にも関わらず、なかなか見つからなかったということは、滅多に存在しないからではないでしょうか。
ところで、中身の種子を確認していないのに、なぜこのツブラジイのドングリが多種子と判別できるのかと言うと、それは普通の単果(1種子)のへそがほぼ丸いのに対し、多種子のものは一般に横長の楕円形だからです(図8-369-2参照)。但し、普通の単果(1種子)でも6枚以上の心皮で構成された雌蕊をもつ雌花が成長したものについては、普通の単果(1種子)よりも一回りサイズが大きくて、しかもへそが楕円形のものが多いんです(*)。ですから、へその形状で判別するには少しばかり注意を要しますが、このツブラジイのドングリには欠損したものも含めて花柱は3本しかありませんでしたので、多種子であることは明白です。
今回、堅果を割って中身を確かめれば済むことなのに、そうしなかった理由は、私のコレクションの中にツブラジイの多種子のドングリがこれしかなかったので、割るのが惜しかったからです。今後、あらたにもう一つ類似のものが見つかれば、その時は割って中身を確認してみますので、悪しからずご了承下さい。
* 雑記128を参照願います。