雑記365. 2019.10.26
“ ルールを破ってみたものの... ”
 アベマキは、春に咲いた花が翌年の秋に結実する2年成です。ところが、私の勤務先の近くにある摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] のアベマキの中に、今年の4月上旬に咲いたばかりの花が、9月上旬の時点で来年の7月中旬〜下旬頃に見られる姿形にまで異常成長しているものを幾つか見つけました(図8-365-1参照)(*)

 この個体の結実時期は例年9月中旬〜下旬頃なので、異常成長した幼果の形態から推測すると、これらが結実するまでのタイムラグは2ヶ月弱ぐらいと予想されます。もしかすると、このまま順調に成長すれば11月上旬頃には結実するかもしれないので、9月上旬からこれらの幼果を追跡調査することにしました。
** 雑記354を参照願います。

 図8-365-1は、異常成長した幼果の存在を初めて確認した9月4日に撮影したものです。黄色の丸で囲んだものがそれに該当します。また、この図では葉の背面に隠れてよく判りませんが、青色の丸で囲んだところにも黄色の丸で囲んだものより少しばかり小さな幼果があります。

 図8-365-2は、図8-365-1から20日程度が経過した9月25日に撮影したものです。いずれの幼果も、9月4日に見た時から顕著な変化は認められませんでした。その後、黄色の丸で囲んだ幼果の方は、その形状のまま徐々に殻斗の鱗片が茶色く変色(図8-365-3参照)し、10月 7日に落下してしまいました。一方、青色の丸で囲んだものも同様に変色して、10月17日に落下しました。

 図8-365-4〜5は、図8-365-1〜3とは異なる枝で異常成長した幼果を撮影したものですが、これらの幼果も10月中旬に枯死しました。他にも確認できる範囲で類似の形態にまで異常成長したものが2つありましたが、結果は同じでした。

 
 幼果の形態から推察した結実までのタイムラグは、普通のものに比べて高々2ヶ月弱ぐらいでしたが、2年成のアベマキにとって春に開花してその年の秋に結実するには少々ハードルが高かったようです。

 旧枝にドングリが結実すると、旧枝を含むその先の新枝への養分の供給が停止して、結実までに必要な養分を得ることができなくなったせいで枯死してしまったんでしょうか。あるいは、普通でもかなりの割合で不稔が存在するので、今回異常成長した幼果の個数からすると、これらは確率的に淘汰されてしまっただけなのかもしれません。いずれにせよ、来年以降に同じシチュエーションが再現する機会があれば、もっと早い段階からこの現象を注視してみることにします。