雑記361. 2019.10.10
“ シリブカガシよりも深く ”
関西で一番馴染みのあるドングリ言えばアラカシですが、関西でも都会っ子が身近で手にすることができるドングリとなると、それはマテバシイではないでしょうか。都会のど真ん中にある公園や街路樹など至る所に植栽されており、毎年コンスタントにドングリを結実する個体が多いことから、この時期になると子供達がドングリを拾う光景をよく見かけます。
マテバシイのドングリの典型的なものは、スラっと細長い砲弾のような形をしていますが、中にはお寺の釣り鐘を縦に圧し潰したような寸胴なものもあります(図8-361-1参照)。この形態のドングリは、関西では鶴見緑地 [ 所在地 : 大阪府大阪市 ] と深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] にそれぞれ複数体ありますが、他では目にしたことがないので、もしかするとマテバシイでは少数派なのかもしれません。
先日、深田公園のマテバシイでこの寸胴なドングリを採集しました(図8-361-2参照)。同園にはこのタイプのドングリを結実するマテバシイが2体ありますが、この図のドングリはその内の1体から採集したものです。堅果の幅は大体17〜19mmぐらいで、コロコロした丸っこい形がとても魅力的で私好みです♪同園にあるもう1体に結実するドングリは、これよりもやや小ぶりですが、堅果の縦横比は同じぐらいです(*)。
* セクション2-1のマテバシイの項に、深田公園の2体から採集した寸胴なドングリを掲載しています。
以前からこのドングリは可愛いという印象が強かったんですが、先日採集していた時にこのドングリがもつある特異性に気づきました。それは、驚くほどへそが深く窪んでいるということです(図8-361-3参照)。
シリブカガシは、その名の通り尻(へその部分)が深く窪んでいます。ただ、セクション20-5で紹介したマテバシイとシリブカガシのへその深さを比較した図を見ると、両者の間に顕著な差は認められず、平均するとシリブカガシの方がマテバシイよりもやや深い程度であることが判ります(図8-361-4の赤色と青色の柱状グラフを参照)。
ところが、今回採集した寸胴なドングリの中からランダムに30個をピックアップして、それらのへその深さを測定した結果、一般的なマテバシイは言うに及ばず、へそが自慢のシリブカガシと比べてもかなり深いことが判りました(図8-361-4の緑色の柱状グラフを参照)。
念のために断っておきますが、マテバシイでは寸胴なドングリのへそが全て深いわけではありません。同じ寸胴なドングリでも、同園にあるもう1体のマテバシイや鶴見緑地の個体から採集したものは、へその深さがどれも0.5mm前後ですから、このドングリが特別なんだと思います。これまで気づかなかったあらたなチャームポイントを見つけたことで、このドングリのことがますます好きになりました☆