雑記360. 2019.10. 4
“ 2つかと思ったら... ”
  山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] で、1つの殻斗が2つの合着した堅果を包含したドングリを見つけました(図8-360-1参照)☆ この形態のドングリは、これまでにも2年に1〜2個の割合で採集してきたので、そんなに珍しいものではありません。ただ、これを見つけると、なぜかいつも心の中でガッツポーズしてしまうぐらい私好みのドングリなんです。しかも、今回のように樹上に結実した姿を目にすることは滅多にないので、思わず2度ガッツポーズしてしまいました☆☆

 この個体のドングリは平均的なマテバシイのものよりやや大きめなので、それが2つ合着するとムッチリ感がハンパではありません。首回りを除くとほぼ完璧に合着していて、少し離れたところからだと1つの堅果にしか見えないところが、とってもグッドなんで〜す♪♪



 それから半月後、今度は鶴見緑地 [ 所在地 : 大阪府大阪市/守口市 ] でも2つの堅果が捩れた状態で合着したドングリを見つけました(図8-360-2参照)。こちらは樹下に落ちていたので、これと対の殻斗は見つかりませんでしたが、この手のタイプのドングリが1シーズンに2個も見つかるなんて、本当にラッキーな年です☆☆

 ところで、採集した時には2つの堅果が合着したドングリにしか見えませんでしたが、自宅に持ち帰ってよく見てみると、実は3つの堅果が合着したものだったんです。
 顕微鏡で首の部分を拡大してみると、3本の花柱がある堅果と4本の花柱がある堅果の間に、紛れもなく1本の花柱をもつ単一雌蕊の雌花が成長した堅果が存在しました(図8-360-3参照)。

 ブナ科の雌花は複合雌蕊が基本ですが、ごく僅かながら単一雌蕊も存在します。単一雌蕊の雌花(図8-360-4参照)には複合雌蕊のものと違って胚珠がありませんので、単果(1つの殻斗が1つの堅果を包含したもの)の形態で結実することはありませんが、多果を構成する殻斗や堅果の一部としてなら、結実したドングリにその痕跡を残すことが可能です(*)

 ただ、マテバシイの場合は痕跡を残せたとしても、単一雌蕊が消滅して形成された紐状の殻斗(図8-360-5参照)しかこれまで目にしたことがありませんでした
(**)。マテバシイで3つの堅果が合着したドングリはとても珍しいのですが、それ以上に、単一雌蕊の雌花が堅果の一部としてその痕跡を残していることに、私はこのドングリがもつ稀少性を感じます。
  * セクション3-2-4を参照願います。
** コナラ属のドングリなら、堅果の形で痕跡を残した事例が多々あります。セクション17にある針状堅果はその一例です。