雑記036. 2010.11.13
“ 寄生虫が創出する変形の美 ”
このホームページは、みなさんと美しいドングリの世界を共感するために開設したのですが、最近では私の個人的な興味と探究心が先行して、見る人にとっては醜悪とも思えるドングリの寄生虫に関する記述が増す向にあります。美しいドングリをご覧になりたくて、このホームページを閲覧されている方には、大変申し訳なく思っております。
私の追及するドングリの美は、完璧なシンメトリー構造ではなく、むしろ現代美術のオブジェにみる造形物をイメージしています。ですから、、パッと見は失敗作とも思える様な歪に変形したドングリに対して、より一層の魅力を感じてしまうのです。
惚れた相手の事を色々と詮索したいのと同じで、変形ドングリについてもそれらのディティールを細かく分析する内に、ドングリを変形させる要因の一つに寄生虫が大きく関与していることが明らかになってきました。そんなわけで、大変申し訳ありませんが、HPの中で寄生虫の事に触れざるを得ない状況になってしまったのです。
ということで、これまで採集した様々な変形ドングリ達(HP未公開品も多数有)について、個別に変形要因を分析していきたいと考えています。手始めに今回は、セクション3-2-2で紹介した “ プックリしたアラカシのドングリ ” [ 図8-36-1(図3-L-1を改番)参照 ] について調べてみました。
手始めにこのアラカシのドングリを選出したのは、このドングリが私の一番のお気に入り(とにかく形がかわいいんです)ということもあるのですが、このドングリを見つけた服部緑地で、ちょうど今時期(11月の上旬〜中旬)に落下したばかりの新鮮なサンプルがたくさん手に入るからなんです。
このドングリは、ある特定のアラカシから落下したものですが、その樹の遺伝的な欠陥によるものかと思われるぐらい、落下した堅果のほとんどが一方向に膨れた形状をしています。
この原因を調べるために、多数の堅果を切断してその内部を観察してみました。その結果、果皮の内壁にセクション9-1で見たものと同じ異物が付着しているのが判りました。異物の外観から、これは明らかに虫瘤であり、たぶんタマバチの仲間が産卵したものと思われます。