雑記357. 2019. 9.20
“ ウラジロガシほどではありませんが... ”
 ウラジロガシの殻斗には、鱗片が輪状のものと渦状のものが混在しています(*)。ところが、ウラジロガシとドングリの形がよく似たアラカシやシラカシでは渦状の殻斗を目にすることはほとんどありません。

 これまで、詳細にチェックしたことはありませんでしたが、ドングリは結実するまでの間にその多くが脱落してしまうので、ウラジロガシに見られるような渦状の殻斗が、アラカシやシラカシにどれぐらい存在するかはっきりさせるには、結実する前の幼果の殻斗を確認してみるのが良さそうです。そこで、昨年から今年にかけて、手の届く範囲の枝に少なくとも200個以上の幼果があるアラカシとシラカシを対象に、各々100体以上の殻斗の鱗片構造を調べてみました。
  * 雑記293参照願います。

 まず、アラカシについてですが、鱗片が輪状の殻斗が大半を占める中、渦状のものも僅かに存在しました。1体につき200個以上検分して数個〜10個ぐらい渦状のものが混在していたので、割合にすると〜5%程度になります。但し、個体差が大きく、渦状の殻斗が見られたものは調査した個体の2割ぐらいでした。

 アラカシの場合、鱗片の上下の間隔が広いので、渦を巻いているか否かの判別は比較的容易でした。図8-357-1は、渦状の殻斗をもつ幼果の例ですが、果軸に着いた状態でも堅果側から見て時計回りに渦を巻いている様子がはっきりと判ります。
 さらに、図8-357-2は図8-357-1とは異なる個体で渦状の殻斗をもつ幼果を撮影したものです。こちらは、堅果側から見て反時計回りに渦を巻いています。

 
 一方、シラカシについてもアラカシと同程度の割合で渦状の殻斗が存在しました(図8-357-3、図8-357-4参照)。但し、アラカシよりも個体差が大きく、渦状の殻斗が見られたのは調査した個体の1割もありませんでした。

 シラカシの場合、鱗片の上下の間隔が狭く、とりわけ殻斗の裾の部分が詰まっているので、堅果側から見て渦を巻いているかどうか判別するのが困難でした。ただ、アラカシと違って果軸が長く、幼果と幼果の間隔が広いので、殻斗を真横から見ることでどうにか渦の有無を判別することができました。
 また、アラカシでは今回確認できませんでしたが、シラカシの殻斗には鱗片が渦状から輪状に移行しているものや、その逆のものが幾つか見られました。