雑記355. 2019. 9.12
“ 鮮度の維持は難しいです ”
 コナラ属でも落葉樹が多いコナラ亜属(*)の樹木は、秋の訪れとともに真っ先にドングリを落すものが多いです。同じ種類でも個体差がありますが、とりわけカシワは9月中にドングリを落とす個体が多いように思われます。先日訪れた港湾緑地南公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] でも、すでにカシワのドングリがたくさん落下していました。
* ウバメガシはコナラ亜属ですが、常緑樹です。

 同園に植栽された10体前後のカシワは、個体毎に微妙に結実する時期が異なり、8月下旬〜9月中旬にかけて様々な形態のドングリを落します。ほとんどの個体は、周囲が柔らかい土壌や落葉、丈の短い草に覆われているので、落下したドングリはカシワの特徴とも言える長い首をそのまま残した極上品ばかりです☆

 図8-355-2は、当日採集したものの中から、首がきれいに残っているドングリだけをまとめて撮影したものです。半分以上はすでに落下していたものですが、軽く木を揺するとまだまだ落下してきたので、この日は鮮度がいいドングリを採集するにはグッドタイミングでした♪

 
 さすがに、首の先端にある花柱は多くのドングリで欠損していましたが、そのままの形できれいに残っているものも少なからずありました(図8-355-3 右側参照)。このように、同園のカシワのドングリは形の上では100点満点かそれに近いものがほとんどですが、ドングリとは思えない青紫色の美しい色彩については、残念ながら短時間で消失してしまいます。

 カシワはシリブカガシと同様に、熟したばかりの焦茶色の果皮に白い蝋状物質が付着しているせいで青紫色に見えます。この蝋状物質は非常に剥離しやすく、採集している最中に汗ばんだ掌に載せているだけで消失してしまいます。また、採集したものを密閉したビニール袋に入れて持ち歩いていると、ドングリから蒸発した水分が媒介して、他のドングリと擦れ合うことで消失してしまうこともあります。そんな訳で、カシワのドングリは他の種類に比べて鮮度を維持するのがとっても難しいのです(図8-355-4参照)。

 当日採集したドングリは、関東ではきれいなカシワのドングリがなかなか拾えないと嘆いておられた、出版関係で度々お世話になっているドングリ仲間の飯田さんにお送りしました。鮮度を重視して、その日のうちに発送しましたが、採集している時のリアルな色彩までいっしょにお届けできないことが、残念でなりませんでした。