雑記353. 2019. 9. 2
“  この時期の定番です☆ ”
 兵庫県伊丹市にある摂津伊丹廃寺跡に植栽されたアベマキの中に、毎年8月下旬から9月中旬にかけて同種の中でもかなり大きなドングリを結実するものがあります(図8-353-1参照)。この個体はそれ以外にも、アベマキではまずお目にかかれない多果ドングリを毎年のように結実しており、それについては過去に何度もこのHPで報告してきました(*)
 * セクション8の樹種別記事のアベマキの項を参照願います。

 多果ドングリをしばしば結実すると言っても、ここ10年ぐらいで殻斗だけしか見つからなかった時も含めると、1シーズンにせいぜい2個がいいところでした。ところが、今年は現時点ですでに5個も多果ドングリが見つかっています(図8-353-2参照)。

 採集した5個の中で、形態に特徴があるものを2つだけ以下に紹介します。一つは、図8-353-2の右上の2果のドングリです(これを拡大したのが図8-353-3です)。2つの堅果の境界は明瞭ですが、へそから首に至るまで隙間なくきれいに合着しています。さらに、一方の堅果の脇には殻斗と癒着した痕跡が認められます。この痕跡は、殻斗の元になる器官に咲いた雌花が退化消滅した事によって生じたもの(**)です。ですから、このドングリの外観は2果ですが、本来殻斗の元になる器官には3つの雌花が存在していた、即ち開花時には3果として発現していたと考えられます。
** セクション3-2-1を参照願います。

 そしてもう1つは、図8-353-2の右下の2果のドングリです(これを拡大したのが図8-353-4です)。同じ形態で、これよりもサイズがやや大きなものを2年前にも採集しました(***)が、落下してからかなり時間が経過していたせいで、堅果が著しく腐敗してました。今回見つけたものは、それよりもやや未熟な状態で成長が停止していましたが、落下せずに長らく樹上に取り残されていたようで、2つの堅果がきれいな状態で残っています。さらに、殻斗を覆う鱗片にも目立った損傷は見られないので、未熟とは言え、以前に採集したものとは比較にならないぐらい “ 上質な逸品(***) ” です☆☆
*** 雑記269を参照願います。