雑記343. 2019. 6. 6
“ アベマキだけではありません! ”
 西神中央公園 [ 兵庫県 : 兵庫県神戸市 ] にあるアベマキの中に、1本の花軸に3つの雌花を咲かせる珍しい個体があります(*)。アベマキは10mmに満たない短い花軸に、1つか2つの雌花を咲かせるのが普通で、3つの以上の雌花が咲くことはまずありません。ところが、この個体は私が始めて目撃してから数年の間、毎年コンスタントにこのような花軸を立てています(図8-343-1参照)。
* 雑記209を参照願います。

 アベマキでこのような花軸が見られるということは、よく似た花軸をもつクヌギにも必ず存在するはずです。そんな訳で、これまで探索に出掛けるたびに、手にとって確認できる範囲のクヌギの枝を観察してきました。
 関西ではクヌギよりもアベマキがメジャーな場所が多いのですが、観察対象となる総個体数ならクヌギの方が圧倒的多数を占めます。ですから、クヌギの方がアベマキよりも見つかる可能性が高いと思っていたんですが、調査を開始してから2年間は全くヒットしませんでした。
 この春で調査開始から3年目に突入しますが、この先まだまだかかるだろうと思っていた矢先、同じ西神中央公園のクヌギで遂に3つの雌花を咲かせた花軸が見つかりました☆ 見つかったのは1本だけでしたが、アベマキで見たものと全く同じ形態でした(図8-343-2参照)。これで、アベマキと同様にクヌギでも3つの雌花を咲かせる花軸が存在することが実証できました。

 
 3つの雌花が咲いたクヌギの花軸は、2つの雌花が咲いたものよりも確かに長いのですが、それでも長さは10数mmしかありません。私は、コナラ属の花軸はそれが誕生した時から現在に至るまで、徐々に短くなっていると考えています。ですから、太古の昔のクヌギやアベマキは、今よりもずっと長い花軸にたくさんの花を咲かせていたと推測しています。これまでに、現存する個体でそのような花軸を目にしたことは一度もありませんが、コナラやウバメガシ
(**)と同様に、クヌギやアベマキの中にもかつては花軸が長かったことを示す痕跡が残っているはずです。それを確かめるべく、これからも鋭意調査を続けていくつもりです。
** セクション22を参照願います。