雑記342. 2019. 6. 1
“ 雌雄が併存する花軸 ”
 今から5年前に、セクション21の5項で “ 雌花序がない雌花軸 ” を紹介しました。雄花しか咲いていない花軸を雌花軸と呼んでいいものかどうか少し悩んだのですが、これらの花軸が雌花軸しか立たないはずのアラカシの新枝の上方に位置することから、敢えてこのようなタイトルをつけました。
 以来、このような花軸はアラカシやシラカシでしばしば目にする機会がありました(図8-342-1、図8-342-2参照)。シラカシでは多果を大量に発現する個体に多く、一方のアラカシは花軸が典型的なもの(=10〜20mm)よりもやや長め(=30〜40mm)で、なおかつ大量の両性花を咲かせる個体に多く見られます。


 
 さらに、こういう花軸のある個体では、雄花と雌花が同じ花軸に併存したものも目にすることもあります(図8-342-3、図8-342-4参照)。両性花(両性形態の花)と雄花、もしくは両性花と雌花が併存する花軸はそれほど珍しくありませんが、雄花と雌花が併存するものは稀です。

 これまで、殻斗の元になる器官(*)と花軸の成り立ち(**)について調べていく過程で、私は殻斗の元になる器官が雌花軸だけではなく雄花軸にも存在し、雄花と雌花の共通の基部になっているのではないかと考えるようになりました。
 なぜなら、我々が現在目にしている花軸が誕生するまでの間に、雄花軸と雌花軸を分離して、それらを新枝の上下に整列配置するには、花軸上で雌雄の花を自在に選択できるようなシステムが必要であり、そのシステムの根幹となるものこそ雌雄の花に共通の基部、即ち殻斗の元になる器官だと考えられるからです。
 図8-342-3や図8-342-4に見られるような、雄花と雌花が同じ花軸にランダムに併存する姿は、雌雄の花に共通の基部が存在する確かな証拠と言えるのではないでしょうか。
  * セクション26を参照願います。
** セクション30を参照願います。