雑記341. 2019. 5.25
“ 大輪の花 ”
 シラカシで多果の雌花を初めて目にしてから、早いもので8年が経ちました(*)。当時は、コナラ属における多果の存在は非常に珍しいものだと思っていたのですが、実態について詳しく調べてみると、ほとんどの樹種では確かにその通りでしたが、シラカシに限ってみるとごくありふれた事象であることが明らかになりました。

 先日訪れた西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] でも、大量の多果の雌花を咲かせたシラカシを見つけました(図8-341-1参照)。この個体は樹高が6〜7mぐらいで、新枝1本当り多いものは40個も多果の雌花が咲いていました。おそらく、この木全体で1万個を超える多果の雌花が咲いていると予想されますが、これと同じようなシチュエーションは京阪神の随所にあるシラカシでしばしば目にします。
* 雑記044を参照願います。

 このようにシラカシを見ていると、多果という特殊な形態がコナラ属のドングリの標準的な姿であるかのように錯覚してしまいそうですが、どんなに大量の多果を発現するシラカシでも、1つの殻斗の元になる器官に4つ以上の雌花(高次の雌花)を咲かせるものには滅多にお目にかかれません(**)。今年大量に多果を発現した上記の個体についても、手が届く範囲の枝で多果の形態を入念にチェックしてみましたが、2果かあるいは3果しか確認できませんでした。

 因みに、これまで私が目撃した高次の多果(4果以上)を発現したシラカシは全部で3体です。これらの個体に共通するのは、ほぼ毎年コンスタントに多果を発現し続けているという点です。たぶん、いずれも多果を発現しやすい遺伝的形質をもっていると思いますが、これらの個体でも毎年高次の多果を発現するわけではなく、これまでに1度しか確認できていないものもあります。
** セクション15を参照願います。

 
 そんな訳で、あまり過度な期待はせずに今年もこれらの個体をチェックしていたところ、5年前に高次の多果の雌花をいくつか目撃した掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] の個体
(***)で、1つだけですが5果の雌花が咲いているのを見つけました(図8-341-2参照)。

 この個体は、私がドングリに興味をもち始めた頃から、毎年のようにたくさんの多果を発現してきました。ところが、数年前から枝葉の伐採が繰り返し行われ、開花そのものが絶えて久しかったので、もう以前のような姿を見ることはできないのではないかと心配してたのですが、この大輪の花(?)を見て少し安心しました。これからも、ドングリに関する貴重な知見をもたらしてくれることを期待しています。
*** 雑記159を参照願います。