雑記340. 2019. 5.16
“ ミズナラの果軸 ”
 国産のアカガシ亜属の樹木とは対照的に、クヌギやコナラのようなコナラ亜属の樹木で多果を目撃することは滅多にありません。但し、これまでの経験から、ミズナラについては他のコナラ亜属の樹種に比べて例外的に多果を発現しやすいように思います(*)。というのも、京阪神に在住している私にとって、ミズナラは普段あまり目にする機会がないにも関わらず、僅か数十体の内の2割もの個体で結実したドングリに多果の痕跡が認められるからです(図8-340-1参照)。
* コナラやナラガシワに見られる、季節外れに開花を繰り返す特殊な個体(セクション22参照)は除きます。

 ブナ科の植物において、果軸の長さと多果の発現の間には相関があると私は考えています。とりわけ国産のコナラ属については、種として平均的な果軸が長いものほど多果を発現しやすく、多果を発現しやすい個体が極端に多いシラカシを除けば、同種でも果軸の長いものほど多果を発現しやすい傾向があると思われます

 ミズナラについては、成熟したドングリの殻斗から伸びる果軸は10〜20mm(図8-340-2参照)が普通なので、これだけ見るとクヌギやコナラの果軸と大差がないように思われるかもしれません。ですが、開花してから半月〜1ヶ月程度の果軸を見ると、実は成熟した殻斗に見られるものからは想像できないぐらい長いことが判ります。

 図8-340-3は、図8-340-2の個体で開花後半月ぐらいが経過した典型的な果軸です。長いものは40〜50mmもありますが、果軸の根元に近い幼果をつけた部分を残して、そこから先が枯死するので、ドングリが成熟した時には10〜20mm程度の長さになっているものが多いようです。
 ただ、個体によっては果軸が長い状態のままドングリが成熟するものもあります。山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] にあるミズナラの中に、開花後半月ほどで果軸が70mm前後にまで達し(図8-340-4参照)、長い果軸のままそこに5〜6個のドングリを結実する個体があります(図8-340-5参照)。マテバシイのような長い花軸に、大きなドングリがたくさん連なった姿は、京阪神にある数少ないミズナラ中でもなかなかお目にかかれないかもしれません☆