雑記338. 2019. 5. 8
“ 葉腋に立ってません ”
 コナラ属の雌花軸は、一般に新枝の上方にある葉腋(普通葉の付根の部分)に立ちます(図8-338-1参照)。一方、雄花軸は新枝の下方で垂下しますが、その付根部分には雌花軸のような普通葉は見られません(*)。つい最近まで、これが新枝の標準的な形態だと思っていたのですが、この10連休中に様々な樹種で開花の様子を観察していたら、少し違うケースもあることに気づきました。
* コナラ亜属ではあまり見かけませんが、アラカシやアカガシのようなアカガシ亜属では葉腋に立つ姿をしばしば目にします。

 図8-338-2は、今年出現したクヌギの新枝に咲いた雌花序を撮影したものですが、1以外の雌花軸(雌花軸2〜4)は全て葉腋に立っていません。連休の前半にこれを見つけてから、連休中に各地で類似のものを探してみると、クヌギにはこのような雌花軸が少なからず(%オーダー)存在することが判りました。

 これと類似した雌花軸の中には、図8-338-3のように枯死寸前の小葉を伴うものも幾つか見られました。たぶん、この小葉は普通葉が退化したものではないかと思われます。

 クヌギ以外の樹種で葉腋に立たない雌花軸を確認したのでは、ウバメガシ(1個体)だけでした(図8-338-4参照)。ウバメガシの雌花軸は、新枝の頂上付近に立つのが一般的ですから、この図のような位置に咲くのは非常に稀なケースではないかと思います。

 葉腋に立たない雌花軸についてクヌギとウバメガシに共通していたのは、何れも新枝の雄花軸が垂下する辺りに位置するという事でした。通常、クヌギの雄花軸は新枝の下方(旧枝に近い辺り)に、そしてウバメガシは新枝の中央から下方にかけて垂下するので、この位置に立つ雌花軸はその個体にとって雄花軸と見做されているのかもしれません。新枝における花序のレイアウト(**)を考える上で、非常に興味深い事象ではないかと思われます。
** セクション30-1を参照願います。