雑記335. 2019. 4.16
“ 暖かそうです♪♪ ”
 昨年の8月、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のアカガシで多果の幼果を見つけました(図8-335-1参照)。

 国産のコナラ属では、コナラ亜属に比べてアカガシ亜属の方が多果を発現する樹種が多く見られます。私の経験から言うと、シラカシが最も発現率が高く、それに次いでツクバネガシ、アカガシ、ウラジロガシがやや高めです。そして、これらに比べて極端に発現率が低いのがアラカシで、イチイガシについては現在に至るまで多果の存在が確認できていません。

 属種を問わず、1つの殻斗が包含する堅果の数は、年月と共に減少する傾向にあることは一般によく知られています
(*)が、それと併行して花軸(果軸)の長さが短くなり、それに伴って着果数も減少する傾向にあると私は考えています。
 花軸の長いマテバシイ属やシイ属等は多果が基本であるのに対し、花軸の短いコナラ属は単果が基本であることからおよその察しはつきますが、これまで調査してきた結果から推察すると、コナラ属の中でも花軸が短い属種ほど多果が発現しにくい傾向がありそうです。ただ、現段階ではまだこれらの関係をデータとして明示できる状況ではないので、引き続き詳細に調査する所存です。
* 1つの殻斗が1つの堅果を包含したものが、最終的な果実の形態です。セクション25を参照願います。

 さて、アカガシ亜属の中でもアカガシは比較的多果の発現率が高く、これまでに何度も複数の個体で小指の先ほどの幼果を採集してきました(**)。アカガシの花軸は、長いものになると40mm前後もあり、ツクバネガシやウラジロガシと同様に、アカガシ亜属の中ではかなり長めの部類に属します(図8-335-2参照)。

 アカガシは京阪神であまり植栽されておらず、これまで容易に手が届く範囲の枝葉に多果が存在する個体が見つかりませんでした。そんな訳で、樹上で成長する多果の姿を間近に観察できる個体に出会えたのは、とてもラッキーでした。
** セクション3-1-2に、成熟したアカガシの多果ドングリの写真があります。

 先日同園を訪れた時は、春の日差しを浴びながら樹上で暖かいフェルトのような殻斗に包まれた姿を確認できてホッとしました(図8-335-3、図8-335-4参照)。昨年見た時とほとんどサイズは変わりませんが、少しばかり殻斗がふっくらしたみたいです♪京阪神ではなかなかお目にかかれない光景なので、これから秋にかけてできるだけ頻繁に訪れて成長する様子をトレースしていきたいと思います。