雑記332. 2018.12.10
“ 多様なアラカシの冬芽 ”
ドングリの生る木の樹皮や葉の形態は個体によって様々です。とりわけ葉の形態については、樹種によってどれが典型的な例なのかうまく説明できないぐらい多様なものもあります。
典型的な例として、図8-332-1にアラカシの葉を示します。アラカシの葉は、『 楕円形の葉の中程から葉先にかけて粗い鋸歯がある 』 ことを特徴として明記した文献が多いのですが、この図を見ても分かる通り、鋸歯がほとんど目立たないものや、シラカシのように葉の2/3ぐらいまで鋸歯があるもの、さらには葉全体が細くて長いもの等、形態は様々です。
図8-332-1. アラカシの葉 (異なる9体から1枚づつ採集) [ 採集地 : 京阪神各地 ( 2018年11月) ]
葉の多様性を示す典型例としてアラカシを挙げましたが、実はアラカシにはもう一つ、国産の他のドングリの木には見られない多様な要素があるのをご存知でしょうか。それは冬芽です(図8-332-2参照)。
冬芽は春の開花後から枝先で少しづつ成長して姿を変えていきます。この図は、ちょうど冬芽の形状が飽和する秋頃に撮影したものですが、大きさや形状、色合いや質感に至るまで、葉の形態と同様に驚くほどバラエティに富んでるんです♪
他のドングリの木の冬芽は、大きさや形に多少の違いが見られますが、私が観察した限りではどれも単調なものばかりでした。単調であるがゆえに、冬芽はドングリの木を識別するのに有効な手段となりうるのですが、アラカシの場合は冬芽の形態で識別しようとすると、かえって混乱をきたしてしまうかもしれません。それぐらいアラカシの冬芽は、国産のドングリの木の中でも多様性がピカイチなんです☆