雑記323. 2018.11. 6
“ バラエティに富んでます☆ ”
 9月の初旬に、山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] にある3体のアラカシでたくさんの多果の幼果を見つけました(*)。それから2ヶ月が経ち、先日同園を訪れてこれらの個体を確認したところ、ほとんどの幼果(多果)が無事に結実していました。
 私の経験から言うと、アラカシはシラカシに比べて多果を発現しにくい傾向があり、たとえ発現しても結実することは非常に稀です。にもかかわらず、特定の公園に何体もの多果を結実する個体が集結していたことに、私はとても驚かされました
  * 雑記309を参照願います。
 さらに、これまで採集したアラカシの多果ドングリは、どれも形態が単調でシラカシのような多様な形態は認められませんでしたが、今回見つけた3体の内の1体には、シラカシと同じ様にバラエティに富んだ形態の多果が数多く結実していました。これらを見ていると、シラカシにしか存在しないように思われがちな多様な多果の世界が、現在ではほとんど多果を結実しない他の樹種にも、はるか昔には同じような世界が展開していたであろうことが容易に想像できます。

 ここでは、様々な形態の多果をたくさん結実した個体の中から、特徴的なものを幾つかピックアップしてご紹介します。

1. 2果のドングリ
 図8-323-1は、1つの殻斗が2つの堅果を包含した2果のドングリです。普通は、殻斗が2つの堅果をまとめて包含するタイプ(図中、堅果統合型殻斗と表示したもの)をよく目にしますが、この個体では殻斗が2つの堅果を分けて包含するタイプ(図中、堅果分離型殻斗と表示したもの)が大半を占めていました。また、シラカシではしばしば見られる堅果と堅果の間に殻斗の仕切り(鱗片がないもの)が存在するものもありました(図8-323-2 下段左図参照)。


2. 3果のドングリ
 図8-323-2は、1つの殻斗が3つの堅果を包含した3果のドングリです。2果のドングリと同様に、この個体では殻斗が3つの堅果を分けて包含するタイプ(図中、堅果分離型殻斗と表示したもの)が大半を占めていました。


3. 堅果のサイズが極端に違う多果ドングリ
 図8-323-3に、多果ドングリを構成する堅果のサイズが極端に違うものの例を示します。このような形態は、堅果統合型殻斗と堅果分離型殻斗のいずれにも見られました。堅果のサイズが微妙に異なるだけで、多果の形態のバリエーションがより豊かに感じられます。


4. 堅果と堅果の間に小殻斗がある2果のドングリ
 2果のドングリの堅果と堅果の間から現れた果軸の先端に、堅果を包含しない小さな殻斗があります。シラカシではこれと同様のものをよく見かけますが、それ以外の樹種では同園のアラカシが初めてです。