雑記319. 2018.10.20
“ 思っていたより多いかも? ”
 一般にマテバシイの花期は5〜6月頃ですが、9月以降に再び開花する個体も少なからず存在します(*)。5〜6月には樹全体で開花しますが、9月以降の開花は主に樹の天辺付近に集中し、あとは樹全体に散見されるのが普通です。

 図8-319-1は、同じマテバシイで春と秋の開花の様子を撮影したものです。どちらも薄黄色や黄緑色に見える部分が開花している箇所ですが、秋の開花はこのように控えめで目立たないことが多いので、みなさんの身近にあるマテバシイが秋に開花していても、気づかれない方が多いのではないでしょうか。

* セクション22を参照願います。

 冒頭で、9月以降に開花する個体が少なからず存在すると言いましたが、残念ながら具体的にどれぐらいの個体が開花しているのかはっきりとお答えすることはできません。ただ、以前マテバシイがたくさん植栽された特定の場所で、9月以降に開花した個体の割合(=開花個体数/総個体数)を調査した結果、西神中央駅付近 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] の街路樹では15本/440体(=3.3%)、シイの実公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] の街路樹では3本/130本(=2.3%)だったので、たぶん2〜3%程度の個体が9月以降に不定期に開花すると推測してきました(**)
** 西神中央駅付近における街路樹のデータは雑記149、シイの実公園の街路樹のデータは雑記091を参照願います。他に、山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] で取得したデータもありますが、これについては秋以降のマテバシイの開花現象でもかなり特異な例 [=48体/72体(=67%)] なので、ここでは割愛しています。因みに、山田池公園のデータは雑記141を参照願います。

 ところが、ここ何年間か秋以降のマテバシイの開花状況をモニターしてきた結果、これまで全く開花実績がない個体でも一年限りで開花している様子を度々目撃してきました。図8-319-2、3は過去5年間で一度しか咲いたことがない個体の例ですが、実際に目撃した数は100体を軽く超えています。

 毎年、あるいは隔年の頻度で秋に開花する個体は、マテバシイ全体では2〜3%程度の割合で存在すると思われますが、一年ないし二年限定といった不定期に開花する個体も含めれば、その割合はもっと高くなることが予想されます。

 このように多くの個体が、少なくとも春と秋の年に2回開花しているわけですが、それらの中には春と同じぐらい秋にも大量に開花する個体があります。その代表的な例は、山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] にあるマテバシイ群です(図8-319-4参照)。それらは、毎年秋になるとほとんどの枝で上下に分かれて、前年の春に開花したドングリ(下段)と前年の秋に開花したドングリ(上段)が時期を同じくして大量に結実します(図8-319-4参照)。
 
 最近ではこの光景を見る度に、現在ではデメリットでしかないと思われる2年成というシステムが、太古の昔には植生分布を拡大する上で非常に優れたものであったことを、ブナ科の樹木を代表してマテバシイが婉曲的に示唆しているように私には思えてなりません
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*** 雑記310を参照願います。