雑記313. 2018. 9.27
“ 被災をまぬがれたアベマキ ”
9月4日に日本列島を襲った台風21号は、近畿各地のドングリの林や森に甚大な被害をもたらしました。大阪府下の代表的なドングリ採集スポットはどこも惨憺たる状況で、とりわけ大泉緑地公園 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] の変わり果てた姿には胸が痛くなりました。大阪府下のドングリの木々が再びよみがえる日がくることを、私はただ祈るばかりです。
さて、台風から半月以上が経過した9月23日に鶴見緑地 [ 所在地 : 大阪府大阪市/守口市 ] を訪れました。ここでは、倒木や折れた枝の撤去が急ピッチで進んでいましたが、比較的ひと気が少ない閑散としたエリアには被災した直後の様子が色濃く残っていました(図8-313-1参照)。
鶴見緑地を訪れる前週の9月15日に、服部緑地 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] を訪れた時には、この時期に毎年大量に落下するはずのアベマキのドングリが壊滅状態だったので、鶴見緑地でも同じような状況を想像していたのですが、幸い同園にある私のお気に入りのアベマキの樹下には、成熟したドングリがたくさん落ちていました(図8-313-2参照)。
ここはクヌギが主体で、アベマキは数えるぐらいしか植栽されていませんが、それらの中でも図8-313-2のドングリは私の大のお気に入りなんです。筒状の内壁をもつ分厚くて深い殻斗や堅果の細長い首を見れば典型的なアベマキのドングリですが、実は一つだけアベマキらしからぬ部分があるんです(図8-313-3参照)。
それは、この個体に結実したドングリのへそに大きく突出したものが多いことです(図8-313-4参照)。それらの中には、高さが3mmを超える出べそもあります(*)。
一般に、クヌギのドングリにはへそが大きく突出したものが見られますが、アベマキは平坦か、もしくは突出してもせいぜい高さが2mmに満たないものがほとんどなので、このアベマキは少しレアなケースと言えるかもしれません。パッと見は典型的なアベマキですが、意外なところにアベマキらしからぬ特徴を併せ持つところが、このドングリをとても魅力的なものにしています。
* セクション20-2を参照願います。