雑記312. 2018. 9.21
“  樹上にて発根 ”
 樹上に結実したばかりのドングリの中に、ときどき果皮が裂けたものに出会うことがあります(*)。それらは、堅果の首回りに少しばかり亀裂が入ったものもあれば、首から胴までパックリ割れて、中から種子が大きく飛び出したものもあります(図8-312-1参照)。但し、通常は果皮が裂けても発根にまで至るケースは稀ですが、アベマキだけは例外で、これまでに何度も樹上で発根している姿を目にしてきました。
 * 雑記 Bを参照願います。

 一般に、ドングリは成熟すると殻斗と堅果の間(もしくは殻斗と果軸の間)に離層が形成されて地上に落ちてきます。ところが、中には離層がうまく形成されずに、成熟しても殻斗と堅果が部分的に繋がったまま樹上から落ちてこないものもあります。そういうドングリの中には、成熟してから数日間雨天が続いたりすると、樹上で殻斗にくっついたまま発根してしまうことがあります(図8-312-2参照)。

 このような現象がアベマキでよく見られるのは、殻斗が分厚くて深く、おまけに裾の辺りには長い鱗片が堅果を包み込むように密生している構造のものが多いことから、殻斗と堅果の間に正常に離層が形成されても、殻斗から堅果が放出されにくいことが関係していると思われます。