雑記311. 2018. 9.15
“  突発的なもの?それとも、遺伝的なもの?? ”
 通勤ルートの途中にある、緑ヶ丘公園から摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] に至るまでのエリアは、多様な形態のアベマキのドングリが採集できる私のお薦めのスポットです。ここに数多く植栽されたアベマキの中には、この種類としては珍しく過去に幾度も多果ドングリを結実した個体(*)があります。
 * 雑記269は、前回この個体から採集した例です。

 先日この稀有な個体から、2年連続で多果ドングリをゲットしました(図8-311-2、図8-311-3参照)。へそがきれいに殻斗から分離していたところを見ると、成熟するまで樹上で過ごしてきたのでしょう。片方の堅果がなかり小さくて果皮に亀裂が入ってますが、外観からはっきり2果と判別できるドングリでした。

 国産のドングリの木の中で、シラカシは多果を大量に発現する個体が非常に多いのですが、それらの多くは2〜3年の間に連続して大量に多果を発現すると、それ以後はほとんど発現しなくなります。多果について調査を始めた当初は、多果の発現はその個体の遺伝的な形質が多分に関与していると思っていたのですが、実際のところそれらの多くは突発的なものでした。

 ただ、シラカシでも毎年のようにたくさんの多果を発現する個体が少なからずあることや、このアベマキのようにほぼ毎年多果や大量の変形ドングリ “ 変形くん ” (図8-311-4参照)(**)を結実する個体もあることから、遺伝的な形質が関与しているものも存在することは確かです。
** 変形ドングリ “ 変形くん ” は広義の多果ドングリで、殻斗の元になる器官に咲いた複数の雌花の内の1つだけが結実(他の雌花は退化消滅)したものです。詳細は、セクション3-2-1を参照願います。