雑記306. 2018. 8. 1
“ こちらの方が識別には有効です ”
  アベマキとクヌギの木を識別するには、葉裏の状態をチェックすることが確度としては一番高いでしょう。クヌギの葉裏には光沢がありますが、アベマキには光沢がなく、微毛がびっしりと生えていて白っぽく見えます(図8-306-1参照)。葉以外に両者を識別するポイントとして、一般に樹皮が挙げられていますが、こちらは葉に比べるとかなり確度が下がります。

 典型的な樹皮を見ればクヌギとアベマキの違いは明白です(図8-306-2参照)。ところが、アベマキにはクヌギとよく似た樹皮をもつ個体がかなりの割合で混在しています(図8-306-3参照)。京阪神の主だった公園や緑地に植栽された個体を見ると、全体の2割強ぐらいのアベマキの樹皮はクヌギとほとんど区別がつきません。

 そんな訳で、私は両者を識別する際、まず葉裏の状態をチェックしています。ところが、葉ほど確度は高くはないものの、樹皮よりもはるかに高い確度で両者を識別できるポイントが実はあるんです。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは冬芽です。
 ちょうど夏から秋にかけてドングリが結実する時期の冬芽を見ると、クヌギとアベマキとでは芽鱗の色に明確な違いがあります(図8-306-4参照)。アベマキの芽鱗は、やや白っぽい部分もありますが、ほとんどは茶色一色です。一方、クヌギの芽鱗は、黒色、紫色、茶色、黄色、白色等が入り混じった鮮やかな色で構成されています。
 これまで、何百体ものクヌギの冬芽を見てきましたが、95%以上
(*)の個体にこの傾向が認められました。この数値を見る限り、樹皮よりは冬芽の方がクヌギとアベマキを識別するポイントとして上位にあることは言うまでもないでしょう。
* それ以外は、全てアベマキと同じ茶色一色の冬芽です。

 ただ、冬芽で両者を識別できるのは、あくまでドングリが結実する頃までです。葉が枯れ始める頃には、クヌギの冬芽の芽鱗から鮮やかな色彩が徐々に失われ、最終的にアベマキと同じ茶色一色になってしまいます。ということで、冬芽は季節限定の識別ポイントですから、取扱いにはくれぐれも注意願います(図8-306-5参照)。