雑記305. 2018. 7.26
“ 苞葉?それとも普通葉?? ”
  高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にあるウバメガシで、幼果の腋にある大きな葉を見つけました(図8-305-1参照)。見た目は普通葉ですが、シチュエーションから察するに苞葉である可能性が高いと思われます。同じ個体の普通葉に比べてやや小ぶりですが、もしこれが苞葉だとすると、こんな立派なものに出会ったのは初めてです(*)
* セクション21に、大きな苞葉の例をいくつか取り上げています。

 ウバメガシの果軸は、クヌギやアベマキのように非常に短い(〜10mm)ので、注意深く観察しないと、幼果の腋にある葉(苞葉)と果軸の根元にある葉(普通葉 : 図8-305-2参照)を区別するのは難しいと思います。

 さて、今回私がこの苞葉に気づいたのには理由があります。実は、この個体からこれまでに例がないぐらいたくさんの単一雌蕊が残留した単果(図8-305-3参照)や多果の幼果(図8-305-4参照)が見つかったせいで、他の個体よりも入念に枝葉を観察していたからなんです。大きな苞葉の発見は、その時の副産物みたいなものでしょうか。

 単一雌蕊が残留した単果や多果の幼果は、いずれもウバメガシではとても珍しく、ウバメガシの植栽数が多い京阪神でも簡単にはお目にかかれない代物です。こういう幼果をたくさん着ける個体は、果実だけでなく果軸の構造も含めて大昔のコナラ属の形質を多分に残しているケースが多いので、最近はこういう個体を探し出して詳しく調査することに注力しています。

 種類を問わず、我々が目にする典型的な形態のドングリやそれらを結実した個体を調べても、そこからドングリの本質に迫る知見を得ることは難しいのではないでしょうか。常とは異なる特異な形態のものを探し出して、それらがなぜ、どのようにして誕生したのかを徹底的に調べあげることこそが、ドングリというものの本質を探るのに最も有効な手段であると私は確信しています。