雑記302. 2018. 7. 6
“ マテバシイのような接合部 ”
 コナラの果軸で妙な形をした幼果を見つけました(図8-302-1参照)。普通のコナラの幼果は、ほぼ球形で外観からは果軸との接合部分が判然としませんが、この幼果は接着剤のようなもので果軸にベッタリと貼り付いたような感じでした。

 この幼果を見つけたのは、春から秋にかけて断続的に開花する特殊なコナラで、多果や両性形態の花を大量に咲かせたり、花軸だけでなく新枝にも開花するといった、コナラ属の原始的な形質と思われるものを多分に残しています。この個体には、図8-302-1の幼果以外にもこれと似たような形態のものが数多く見られました。

 図8-302-2は、図8-302-1の幼果を拡大したものです。普通の幼果に比べて殻斗そのものが横方向に広がっていますが、注目すべきはその下にある果軸との接合部です(図8-302-3参照)。一般のコナラ属ではまず目にすることがない形態で、まるでマテバシイの果軸に着いた幼果みたいでした。

 マテバシイのドングリが成長しても果軸と殻斗が分離せずに繋がったままなのは、たぶんこの分厚い接合部のせいでしょう。コナラ属のドングリは、マテバシイ属に比べてこの接合部が極端に薄く、接合面積も小さいので、殻斗と果軸の間に離層が形成されることで両者は容易に分離すると思われます(*)
* コナラ属のドングリでも、殻斗が果軸に繋がったままの状態で落下しているものもありますが、マテバシイのものほど両者の繋がりが強固ではありません。

 これまで、果軸と殻斗の間にある厚い接合部はマテバシイ属に特有の形態であり、コナラ属には存在しないものだとばかり思っていましたが、原始的な形質を残したコナラでこの幼果を目の当たりにしたことで、今ではコナラ属でもマテバシイ属と同じような接合形態を模索した時代が遠い昔にあったのではないかと思えてなりません。