雑記300. 2018. 6.15
“ 単一雌蕊が関与してます! ”
 コナラの果軸を見ていると、ときどき冬芽のような形をした単果を目にすることがあります(図8-300-1参照)。この単果は堅果を包含せずに殻斗だけが成長したもので、以前雑記205でも紹介したことがあります。

 多果の殻斗に見られる紐状殻斗(*)や殻斗の元になる器官
(**)について詳しく調査してきた結果、この単果も紐状殻斗と同様に、極微な単一雌蕊をもつ雌花が退化消滅したことによって生じたものであると私は推測しています。ただ、多果の紐状殻斗については、辛うじて退化消滅せずに残留した微小な堅果(単一雌蕊の雌花に由来したもの)が存在するのを何度か目撃してきましたが、単果でそのようなものを目にしたことは一度もありませんでした。
  * セクション3-1-4の4項を参照願います。
** セクション26を参照願います。

 そもそも、多果と違って単一雌蕊の雌花に由来した単果を目撃することは稀です。しかも、これまでに実見した単果は、いずれも多果の紐状殻斗に残留していた微小な堅果とは異なり、一般的な複合雌蕊の雌花に由来したものと同じぐらいの大きさの単一雌蕊ばかりでした(図8-300-2参照)。

 そんなわけで、調査にはかなりの時間を費やしましたが、先日、塩瀬中央公園 [ 所在地 : 兵庫県西宮市 ] のコナラで多果の紐状殻斗に残留していた堅果と同じぐらいの微小な堅果を包含した単果(単一雌蕊の雌花に由来)を探し出すのに成功しました。この堅果は、花柱の直径(***)が僅か150ミクロンしかありませんでした(図8-300-3 上段参照)。
 さらに、同じ個体から殻斗だけが成長した単果(図8-300-3 下段参照)もいくつか見つかりました。単一雌蕊の雌花に由来した堅果を包含しているか否かという点を除いて、当然の事ながら両者の外観は酷似していました。
*** 花からドングリに成長するまでの間、花柱のサイズはほとんど変化しません。ですから、幼果における花柱の測定値は、雌花の時の花柱のサイズとほぼ同じと考えて間違いありません。
 今回取得した一連のデータは、殻斗だけが成長した幼果が、極微な単一雌蕊の退化消滅によって生じたものであるという推測を裏づけるのに、非常に有効ではないかと私は考えています☆