雑記296. 2018. 5.15
“ 分裂した殻斗の元になる器官 ”
コナラ属の殻斗の元になる器官は宝珠のような形をしています。そこに雌花が咲くと、宝珠の先の尖った部分が開いて中から雌花が現れます。開花しなかった殻斗の元になる器官は、宝珠のような形のままやがて枯死しますが、開花したものは丸みを帯びた台座のような形に変わります(図8-296-1参照)。
これまで目撃してきた殻斗の元になる器官は、全てこのような台座のような形をしていましたが、先日この部分がいくつかの断片に分裂した花びらのような形をしたものを見つけました(図8-296-2参照)。
この特異な雌花序は、兵庫県神戸市の蒲池公園にあるアラカシで見つけました。実はこのアラカシ(*)、以前幼果の殻斗が激しく変形したり分断しているのを見つけたのと同じ個体なんです(図8-296-3参照)。
今回、この個体の下方に伸びた枝を手当たり次第に調べたところ、およそ3〜4割の雌花序から分裂した殻斗の元になる器官が見つかりました。
* 雑記129、151を参照願います。
これまで、輪状構造の殻斗が変形したり分断したりする理由として、多果の発現が関与していることをこのHPの中で実証してきました。ただ、多果の発現ではどうしても説明がつかないケース(**)もあって、これまでずっと頭を悩ませてきました。そんな中、今回見つけた特異な雌花序によって、ようやく殻斗の元になる器官の形態が関与していることが明らかになったのです☆ 私の身近に、こういう稀有な個体が存在してくれたことにとても感謝しています!
** 雑記202を参照願います。