雑記291. 2017.12. 6
“ コナラ属では2例目です ”
ツクバネガシは、雑木林や公園で目にすることはほとんどありませんが、神社やお寺ではわりとよく見かけます。私が住んでいる兵庫県三田市にある貴志御霊神社 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ]にも、たくさんのツクバネガシが植栽されています。
比較的目につきやすい参道沿いや本殿の周りには、合わせて10体前後しかありませんが、敷地内の鬱蒼と茂る林の中には大きくて立派なツクバネガシが40体以上あります。個体毎に豊作、不作はありますが、ここで採集できるツクバネガシのドングリの形態の多様性は、これまで京阪神で訪れたところでは間違いなくNo.1です☆
先日、参道沿いにあるツクバネガシの中に、例年に無くたくさんの多果ドングリを落とした個体がありました。この個体は、これまでにもしばしば多果の幼果を確認してきたので、多果を発現しやすい形質をもっていることは確かですが、実際に結実したのを見たのはこれが初めてでした。
1つの殻斗の中に同じサイズの堅果が2つ、乃至3つ入ったものが主でしたが、中には3つの堅果の内の2つがとても小さな3果のドングリもありました(図8-291-3参照)。
現地で採集していた時には気がつかなかったのですが、自宅に持ち帰って1つずつよく見てみると、2果のドングリのように見えた殻斗の端に、紐状殻斗があるものを見つけました(図8-291-4参照)。
紐状殻斗(*)は、殻斗の元になる器官に咲いた極微な単一雌蕊の雌花が、開花後短期間で消滅して、それを包含するはずの殻斗だけが細長い紐のような形に成長したものです。果軸に直接形成された紐状殻斗については、様々な属種で確認してきました(**)が、多果の殻斗にあるのを見たのは、コナラ属ではシラカシに次いで今回のツクバネガシが2例目です(***)。種や属に関係無く、同じ事象が存在するということは、ドングリの殻斗が全て同じ基本構造から成ることの確かな証拠だと私は考えています。
* セクション3-1-4の4項を参照願います。
** 雑記205、265を参照願います。
*** 紐状殻斗はマテバシイ属にも見られます。雑記218を参照願います。