雑記029. 2010.10.17
“ 小冊子 【 読売ライフ 】 に写真を提供しました ”
 読売新聞の小冊子 【 読売ライフ 】 の編集部の方からメールを頂き、シリブカガシのドングリの写真を11月号のドングリ特集記事に掲載したいとの申し出がありました。いくつかドングリを紹介しているサイトの中で、シリブカガシのぴっかり光る様がよく判る写真を探していたところ、このHPに掲載している写真をお気に召されたようです。この度は、採用頂きまして誠にありがとうございました。

 ぴっかり光るシリブカガシは、実は自然の状態ではありません。本来、落下したばかりの堅果の表面には、図8-29-4の様な白い蝋状の物質が付着しています。堅果の表面が青黒色もしくは濃紫色に見えるのは、黒色もしくは焦茶色の堅果の表面に、この蝋状物質が付着しているからなんです。
 私のHPでは、美しいドングリを紹介することをモットーにしてますから、表面に付着した蝋状物質を柔らかい布できれいに拭き取って艶出しをしています。ですから、図8-29-3の写真には、ドングリの本質は損なわないものの、多少作為的な要素が含まれていることを了承下さい。

 ドングリの堅果の表面は、毛で覆われているもの等を除くと、布で軽く擦るだけでキラキラと色艶良く輝きます。ところが、宝玉の様なその美しさは時間と共に急速に色褪せて、薄茶色か黄土色のくすんだ表面に変わり果ててしまいます。勿論、シリブカガシも例外では無く、その美しさを長く保つことは出来ません。

 参考までに、シリブカガシの堅果の色が変化していく様を、図8-29-5に示します。シリブカガシのドングリは、大抵の場合、図中の(a)もしくは(b)の状態で落下します。落下してから1週間〜2週間経つと、急速に堅果表面が濃茶色 [ 図中(c)の状態 ] に変化します。その後は、落下地点や天候にもよりますが、1ヶ月と経たない内に薄茶色へと変色していきます
(注)
 こうなると、最早落下したての頃の漆器のような質感を想像することは出来ません。

 ドングリの色艶を長く保存することが出来ないのは非常に残念ですが、この美しい輝きが一瞬であるからこそ、私は新鮮な気持ちで毎年ドングリと対面出来るのかもしれません。

(注) 落下地点や天候以外にも、落下後に堅果が殻斗から分離したものとそうでないものとでは、へそから蒸発する種子の水分量が異なるので、堅果の変色程度には大きな差が出ます。