雑記288. 2017.11.22
“ やはり、秋に咲いていました ”
今年の春、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で果軸が枝垂桜の枝のように長い(〜30cm)ツブラジイを見つけました(*)。春だというのに、薄茶色の果軸にまだ黄緑色の部分が残っていたことから、この果軸は昨年の春ではなく秋以降に咲いたものではないかと考えてきました。
* 雑記252を参照願います。
その後、この個体を調査してきた結果、今月の上旬に垂下した極端に長い雌花軸と普通サイズの短い雄花軸が樹上に咲いているのを見つけました(図8-288-1参照)。今年の秋の開花は非常に小規模でしたが、予想した通り、5月に目撃した長い果軸は昨年の秋に咲いたものであることがこれで明らかになりました。
一方、昨年の秋に開花した果軸については、大半がすでに脱落しており、この時期まで樹上に残ったものはごく僅かでした。しかも、残留している果軸のほとんどがドングリを結実しておらず、20cm以上の果軸でドングリが結実したのは1本だけでした(図8-288-2参照)。
但し、20cmに満たない果軸(15〜20cm)については、10本前後と数は少ないですがドングリを結実していました(図8-288-5参照)。
採集したドングリの中には不稔のものもありましたが、ちゃんと種子が詰まっているものの方が多く、マテバシイと同様にツブラジイでも、秋に咲いた花でも翌年の秋に実を結ぶことが確認できました。
ただ、同じシイ属でもスダジイは、これまで目撃してきた全ての個体で秋に咲いた花の結実状況が悪かったので、 私の中に “ 季節外れに開花したシイ属のドングリは結実しにくい ” というジンクスがあるのですが、このツブラジイもそれを否定するものではありませんでした。
余談になりますが、実はこのツブラジイを初めて見た時、スダジイなのかツブラジイなのかはっきりと区別できませんでした。樹下には前年に結実したドングリが落ちてなかったので、樹木の形態や果軸の特徴から漠然とツブラジイではないかと勝手に推測していたに過ぎなかったのです。それなのに、最初から文中にツブラジイと明記してしまい、少し先走ってしまったことを内心後悔していました。
そんな訳で、この個体から採集したドングリに典型的なツブラジイの特徴(図8-288-7参照)を確認した時には、正直ホッとしました。ドングリの樹は種間交雑するので、明確に樹種を特定できないケースが多々あります。今回の件を教訓に、今後樹木の識別に関しては、慎重の上にも慎重を期すことにします。