雑記282. 2017.10.27
“ 命がけの産卵 ”
先月、産卵のためにコナラのドングリに穿孔していたハイイロチョッキリの撮影に成功(*)しましたが、今度は同じくコナラのドングリに穿孔していたコナラシギゾウムシの撮影に成功しました☆☆
* 雑記273を参照願います。
場所は、私がお気に入りの掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] です。ハイイロチョッキリと同様にコナラシギゾウムシについても、これまで幾度も穿孔している姿を目撃してきました。ただ、いつも樹上で手が届かないところにある枝のドングリに穿孔していたので、近接撮影ができませんでした。
今回は運よく、地上から2m少々のところにある枝のドングリで作業していたので、その枝を片手でゆっくりと引きずり降ろし、そのままの状態で約40分間撮影を続行しました。もう片方の手にもったカメラのファインダーをじっと覗き込んでいると、周囲で遊んでいた子供達が集まってきて、
“ おじさん、何してるの?”
“ もしかして、不審者??”
等と、さんざん好き勝手な事を言われてしまいました。子供たちが私のやっている事に興味を無くすまでの数分間は、居たたまれない気持ちになりながらもそのままの体勢を余儀なくされてしまいましたが、その甲斐あってなかなかいい写真を撮ることができました。
今回目撃したコナラシギゾウムシは、すでに熟して茶色く変色した果皮にダイレクトに穿孔していました。未熟で柔らかい緑色の果皮じゃないと口吻を差し込むことができないと思っていた私にとって、これは意外でした。もしかすると、このコナラシギゾウムシは仲間内でも特に気合が入った奴(?)だったのかもしれません。
さて、このコナラシギゾウムシは、口吻を軸にして頭部を左右に回転させるモード(図8-282-3参照)と、体全体を時計回りと反時計回りに回転させるモード(図8-282-4参照)を併用しながら、ゆっくりと時間をかけて穿孔していました。そして、口吻の半分以上がドングリに埋もれるぐらいまで穿孔した後、孔から口吻を抜き取り、そこに腹部を当ててアッという間に産卵を終えていました。
産卵は一瞬でしたが、その後の口吻の手入れには余念がなく、前足で丁寧にしごきながらピカピカになるまで付着したドングリの屑を拭き取っていました(図8-282-5参照)。道具を大切に扱っている姿は、まさに職人顔負けでした。
撮影を終えて園内を散策していた時、別のコナラに結実したドングリの殻斗に、焦げ茶色の針のようなものが刺さっているのが目につきました(図8-282-6参照)。近づいてよく見ると、それは穿孔している最中に折れてしまったと思われるコナラシギゾウムシの口吻でした。口吻が刺さった部分を見ると、堅果は未貫通の状態でした。子孫を残すということは、人間だけでなくコナラシギゾウムシにとっても命がけなんですね。