雑記267. 2017. 8.21
“ 長い果軸をもつツブラジイ ”
 5月の連休に、今まで見たこともないような長い果軸のツブラジイを見つけました(*)。果軸の長さは、長いもので30cm近くもあり、そこに50個前後の幼果が着いていました。
 通常、一年が経過した果軸は焦茶色に変色しますが、これらの果軸はどれも多少黄緑がかっており、果軸がついている前後の枝に典型的な短い果軸(昨年と今年の春に開花したもの)が立っていたことから、たぶん長いものは昨年の秋頃に開花したのではないかと思われます。
* 雑記252を参照願います。

 連休以降、定期的にこの個体をチェックしていますが、7月に入った頃から少しづつ幼果が膨らみ始め、現時点で横幅が4〜5mmぐらいあります。果軸の長さだけではなく、幼果そのものも一風変わっており、まるでチリメンガシ(**)の殻斗のように鱗片が毛羽立っています(図8-267-2参照)。
 同時期の普通のツブラジイの幼果と比べてサイズは変わらないので、これからまだまだ成長するかもしれません。
** ウバメガシの園芸品種で殻斗の鱗片が刺々しいのが特徴です

 
 スダジイやツブラジイの中には、マテバシイと同様に秋に開花する個体が少なからずあります。ただ、私のこれまでの調査結果をみると、マテバシイでは秋に咲いた花が結実する割合が比較的高いのに、スダジイやツブラジイはかなり低い傾向があります。
 同じ園内に植栽されたスダジイの中にも、毎年必ずと言っていいぐらい5月と11月に開花する個体がありますが、後者の結実状況は極めて悪いです(図8-267-3参照)

 図中の濃青色で囲んだ部分が、昨年の11月に開花した果軸です。白い丸で囲んだ2つの幼果は、現在の大きさから見て今年の秋に結実する可能性が高いですが、他は全て不稔であることが予想されます。同園以外の多くのスダジイやツブラジイも、秋に開花したものはこれと似たような状況で、それらの多くは毎年秋に大量に開花しても、一つとして結実したことがありません。

 このような状況なので、私としてはこのツブラジイに対してあまり期待はしていませんが、願わくばこの秋に、紐のような長い果軸にたくさんのドングリが列を成して結実した姿を拝ませてほしいものです。