雑記263. 2017. 7.27
“ 殻斗だけになっても成長してます ”
殻斗の元になる器官は、そこに咲いた雌花が何らかの原因で退化消滅してもその存在を記憶しており、その雌花に関する情報も加味して殻斗を形成します。但し、退化消滅した雌花を包含するための殻斗は成長が著しく鈍く、ほとんどは殻斗の元になる器官とさほど変わらないサイズのままです。図8-263-1と図8-263-2は、それぞれ殻斗の成長が停止したアラカシとシラカシの幼果の例です。
ところが、中には殻斗だけでも僅かながら成長し続ける幼果もあります(図8-263-3参照)。この図を見ると、およそ半月ぐらいで先端付近の殻斗の環が一つ増えているのが判ります。
殻斗だけになっても成長する幼果は、ほとんどがこの時期の普通の幼果に比べると極端にサイズが小さなものばかりですが、先日高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で見つけたアラカシの幼果は、これまで見たものとは比較にならないぐらい大きなものでした(図8-263-4参照)。
パッと見、まるで冬芽のような形をしていますが、これでも立派な幼果です。こちらも、ここ半月程で僅かながら成長しているようなので、これからどのように変化していくのか楽しみです。殻斗だけになっても成長するものとしないものがあるのは、おそらく雌花のサイズや消滅のタイミングが関与しているのではないかと推測しています。
みなさんは、この冬芽のようなアラカシの幼果とよく似た姿形のコナラの幼果(*)を、以前このHPで紹介したのを覚えておられますでしょうか。一見、NGと思われるドングリの形態にも必ず意味があります。その意味を一つ一つ解き明かしていくことが、ドングリの本質を解明する最も有効な手段だと私は考えています。
* 雑記205を参照願います。