雑記261. 2017. 7.20
“ 奇妙な形をしたアラカシの幼果 ”
現在のところ、殻斗の元になる器官はシラカシとアラカシの果軸でしか確認できていませんが、雑記260で紹介したように、同じ樹種でもそれらのサイズには大きな違いがあります。
少し前まで、同じ個体でも形態が全く異なるドングリ(*)が誕生するのは、殻斗の元になる器官のサイズの違いが原因だと考えていたのですが、どうもそれだけではないことをにおわせる幼果が高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で見つかりました。
* 雑記053、雑記069を参照願います。
この個体の幼果は、これまで私が観察してきたコナラ属の樹木では類例がないぐらい形態が多様です。そして、それらの中に図8-261-2や図8-261-3のような普通のものに比べて極端に小さな幼果がありました。
ドングリの花柱は、雌花の時とほとんどサイズが変わらないので、これらの図の普通の幼果と比べてみれば、特異な幼果の元になった雌花のサイズがかなり小さかったことが判ると思います。
これらの雌花が小さかったのは、その土台になる殻斗の元になる器官が標準的なサイズよりもかなり小さかったことに起因するかどうか、現在の幼果からは想像できませんが、標準的なサイズの殻斗の元になる器官に不釣り合いなほど極端に小さな雌花が咲く可能性は否定できません。
ということで、同じ個体でも形態が全く異なるドングリが誕生するのは、殻斗の元になる器官が標準的なサイズからかけ離れた場合か、あるいは殻斗の元になる器官が標準的なサイズでも、そこに咲く雌花のサイズが標準的なサイズからかけ離れた場合の2つのケースがあると私は推測します。
これらの特異な幼果は、現在も枯死することなく順調に成長し続けています(図8-261-4参照)。この先、どのように変化していくのかとても楽しみです。
(追記)
雑記264の末尾で述べた通り、今後は殻斗の元になる器官の先端部分の口が完全に閉じたものだけを、開花しなかった殻斗の元になる器官と見做します。そんなわけで、図8-261-1の先端部分の口が微妙に開いているものについては、開花した殻斗の元になる器官に修正します。