雑記250. 2016.12.17
“ 渦を巻いた殻斗はNGなの? ”
オキナワウラジロガシのドングリは、大きな堅果もさることながら、サイズの異なる輪を積み重ねたようなリング状の鱗片をもつ、大きくて頑丈な殻斗も大変魅力的です(図8-250-1参照)。典型的な殻斗はリング状の鱗片ですが、文献には渦状の鱗片も掲載されていました。
そこで、今回のツアーで多くの個体から採集したオキナワウラジロガシの殻斗の中に、リング状の鱗片と渦状の鱗片がどの程度の割合で存在するか調べてみることにしました。
ツアー期間中に私が採集した殻斗は、全部で241個ありました。比較的傷みの少ないものを選別しながら採集しましたが、鱗片の構造は無作為でした。これらを一つ一つ入念にチェックした結果、ほとんどはリング状の鱗片でしたが、渦状の鱗片(図8-250-2参照)が8個ありました。それらの殻斗は形態が様々で、特定の個体から採集したものではなさそうでした。ということで、オキナワウラジロガシの殻斗における渦状の鱗片は、今回採集したものの中に3.3%(*)の割合で混在していました。
* これは久米島の特定の地域で採集した殻斗から得られた値であり、オキナワウラジロガシが分布する他の島々の個体は考慮していません。
渦状の鱗片をもつ殻斗の割合がこれだけ低いということは、オキナワウラジロガシの殻斗も他のアカガシ亜属のものと同様に、リング状の鱗片が普通であり、渦状の鱗片は殻斗を紡ぐ際にちょっとしたボタンの掛け違いのようなことが起こって、このような形態を余儀なくされたのかもしれません。
今回採集した渦状の鱗片をもつ8個の殻斗の中に、1個だけ渦状の鱗片が途中からリング状に遷移したものがありました(図8-250-3 右側参照)。これを見ると、オキナワウラジロガシが殻斗を形成する際に、鱗片が渦を巻くのを防ぐ為に自力で矯正してリング状に戻したように思えなくもありません。みなさんは、オキナワウラジロガシの殻斗の構造についてどのように解釈されますか?
(追記)
ツアーに同行された飯田さんにも、殻斗の鱗片の構造について調査を依頼しました。その結果、全部で120個採集した殻斗の中に渦状の鱗片が4個あったので、全体に占める割合は3.3%ということになりました。私の集計結果と全く同じ値が出たことに正直驚きました。今回は、久米島の島尻周辺に自生する個体を対象にしましたので、次回のツアーでは島内の異なる場所から採集したものについて、同様に調査してみるつもりです。