雑記247. 2016.12.10
“ 第2回 久米島ドングリ探検ツアー 中篇 ”
 ツアー3日目の11月29日の早朝は、あいにく雲の多い空模様でした。ただ、時折雲の切れ間から少しだけ太陽が顔を覗かせていました。今回のツアーでは、樹上に結実したドングリを撮影するのが最大の目的だったので、天気が大きく崩れない内に飯田さんと前日に訪れた山城の山道へ撮影に向かいました。

 オキナワウラジロガシのドングリは、島内のどこに行ってもほとんどが樹の高所に結実しているので、樹上を見上げてもなかなかドングリの姿をとらえることができません。ところが、山城の山道は数m下にある枯澤に根をはった樹が多く、一段高い澤の岸からなら僅か3〜5mの距離から高所に結実したドングリの様子がはっきりと判るので、今回の目的を達成するには絶好のポイントでした。

 
 前日訪れた時はどんよりとした曇り空だったので、カメラのピントは全く合いませんでしたが、当日は比較的天気が良かったので、ドングリの姿を鮮明にとらえることができました(図8-247-1参照)☆

 山城での撮影が終了した後、再び前日訪れた島尻の山道に向かいました。ここで10時過ぎにKさんご夫婦と合流し、まずは島尻の澤の奥にある山中を案内していただくことになりました(図8-247-2参照)。

 亜熱帯特有の樹木が生い茂る林の中を、樹々をかき分けながら進んでいくと、しばらくして少し開けた場所に出ました。そこには、やや大きめのオキナワウラジロガシの樹がたくさんありました。Kさんの話では、例年だと前日に訪れた島尻の山道でそこそこドングリが落ちていたら、ここにも落ちていることが多いとの事でしたが、今年は不作なのか、あるいは落下が少し遅れているせいか定かではありませんが、残念ながら全く落ちていませんでした。

 山中でのドングリ探索を諦めて澤まで戻り、今度は前日訪れた山道まで澤沿いに探索してみることにしました(図8-247-3参照)。すると、ここはアタリだったみたいで、澤の岩場のあちらこちらにたくさんのドングリが落ちていました。

 この辺りで採集したドングリは、オキナワウラジロガシとしては小粒か並みのサイズがほとんどでしたが、堅果の形態のバリエーションが驚くほど豊かで、三角形や扁平な台形といった今年の2月のツアーでお目にかかれなかったような形態のドングリがたくさん採集できました(図8-247-4、図8-247-5参照)。


 
 この日の澤沿いでのドングリ探索は、今回のツアーで最も印象深いものでした。澤の真ん中に下り立つと、そこには人工的な構造物は何も目に入らず、倒木や蔓性の植物、そして本土では見られない南国に特有の植物が繁茂しており、私が子供の頃に一度は行ってみたいと思っていたジャングルそのものが拡がっていたからです(図8-247-7参照)。
 しかも、澤沿いで探索を始めた頃からみるみる青空が拡がって、絶好のドングリ日和になりました。私の憧れていた場所で、心地よい澤の流れる音を耳にしながら、木漏れ日が射す落ち葉の下や岩陰に隠れている立派なオキナワウラジロガシのドングリを拾い集めていると、本土では決して味わうことができない、何とも形容し難い贅沢な気分に浸ることができました。


 午前から午後にかけて、2時間近く澤沿いでの探索を満喫した後、この日最後の採集スポットであるアーラ岳に向かいました(図8-247-7参照)。Kさんの話では、アーラ岳は島内でも屈指の巨大ドングリ(堅果長は50mm前後に達する)が拾えるところだそうです。ただ、昨年と一昨年は全然実りが無かったとの事。
 “ 今年はアーラ岳に登ってないので、ドングリが落ちているかどうかわかりません ” と事前にKさんからお聞きしていたのですが、島尻の澤に続いてこちらでもジャングル気分を味わいたかった私にとって、もはやドングリの有無は二の次で、早速Kさんご夫婦に案内していただくことになりました。飯田さんは、アーラ浜で海のひろいものを希望されたので、ここからは別行動になりました。

 アーラ岳の登り口から樹海に入ると、道らしきものは無く、眼前には縦横に伸びた植物が行く手を阻み、鉈が無いと思うように進むことができないような状態でした。しばらくの間、両手両足で植物をかき分けながら進み続けると、やや開けた巨岩のある斜面が現れました(図8-247-8参照)。ちょっと前までは道を切り拓くのが精一杯だったのですが、ここにきてようやく周囲の光景を見渡す余裕がでてきました。

 しばらくの間斜面を登り続けていくと、大きなオキナワウラジロガシの樹がたくさんあるが斜面に到達しました。ちょうどその場所が、多い時には足の踏み場もないぐらいドングリが落下するエリアだそうですが、残念ながら全く落ちていませんでした。

 アーラ岳でのドングリの収穫はゼロでしたが、島尻の澤をはるかに超えたハードなジャングルを味わえたので、私としては大満足でした。また次の機会に、ドングリの雨が降りしきるアーラ岳の山中を探索できるのを心から待ち望んでいます。

 結局、この日収穫があったのは冒頭で樹上のドングリを撮影した山城の山道と島尻の澤だけでしたが、それでも上質のドングリが150個ぐらい採集できました。ツアー最終日となる11月30日の成果については、近日中にリリースしますので、引き続きご覧下さい。

(追記)
 図8-247-9にあるのは、当日アーラ浜で倒木から採取したモクマオウ [ 学名 : Casuarina stricta ] の実と、アーラ岳の麓に落ちていたミフクラギ [ 学名 : Cerbera manghas ] の種です。

 モクマオウの実は松ぼっくりのように見えますが、実は被子植物の球果です。一方のミフクラギ(別名:オキナワキョウチクトウ)は、沖縄地方の海岸沿いの森林によく見られる樹です。この種を拾った時は、どす黒く腐敗した果肉がこびりついていたのですが、水を付けた歯ブラシで丁寧にこそぎ落とすと、中から図のような可愛らしい種が現れました。
 今回拾ったミフクラギの種は、アーモンドのような形をしていましたが、ネットで検索すると球体のものもあるようなので、次回久米島を訪問した時には、球体のものも探してみます。