雑記235. 2016.10.17
“ コナラ亜属にしては多果ドングリが多い ”
  ミズナラは寒冷な気候を好むので、京阪神の平野部にある公園や緑地では僅かしか見られません。セクション7のどんぐりマップに掲載した大きな公園や植物園でもせいぜい1〜2本ぐらいで、山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] だけが例外的に10本前後植栽されています。
 その山田池公園で、今年の9〜10月にかけてミズナラのドングリの結実状況を調べた結果、3体(以下、文中で個体1〜3と表記)から成熟(もしくはほぼ成熟)した多果ドングリが見つかりました。これまでの経験から言うと、アカガシ亜属では種類を問わず多果が発現しやすく結実することも多いのですが、コナラ亜属では多果が発現しても、結実することは極めて稀です。
 そんな訳で、僅かな数しか植栽されていない同園のミズナラから、複数の個体で多果の結実が確認できたことにとても驚きました。以下に、採集した多果について簡単に紹介します。

 図8-235-1は個体1から落下したもので、明らかに2個の堅果が合着した2果のドングリです。残念ながら、熟す前に落果したみたいで、堅果はつぶれていました。

 同じく、図8-235-2も個体1から落下した2果のドングリです。2個の堅果が完全に一体化しており、パッと見単果のようですが、花柱に注目すると2個分の花柱を花被片が一纏めにして包む様子がはっきりと判ります。

 次に、図8-235-3は個体2から落下したもので、一方の堅果が細長い2果のドングリです。細長い堅果の先端部分には、きれいに花柱が残っているので、はっきりと多果であることが判ります。

 このドングリ、実はミズナラではなくフモトミズナラです。フモトミズナラについては、以前紹介した兵庫県宝塚市の街路樹でも多果の結実を確認しています
(*)。フモトミズナラはコナラの亜種と言われていますが、ミズナラと違ってコナラでは滅多に多果を結実しないことや、ドングリの形態的特徴がミズナラにより近いことから、本当にコナラの亜種として分類してもいいものかどうか、少し疑問に感じています。
* 雑記168を参照願います。

 最後に、図8-235-4は個体3から落下したもので、こちらも一方の堅果が極端に細長い2果のドングリです。残念ながらこのドングリには、細長い堅果の先端に花柱は残っていませんでしたが、殻斗の内側にある離層の痕跡を見れば2果であることは明らかです。。