雑記233. 2016.10. 8
“ キズがあるのに味わいがある ”
  樹下に落ちたドングリの中には、果実として熟してはいるものの、果皮の全体、もしくはその一部に緑色の部分を残したものがあります。その代表的な例はウバメガシですが、これはあくまで例外であって、ほとんどの種類のドングリは全体が茶色や焦茶色に変色したのが普通です。

 これまで、クヌギやアベマキでは果皮に緑色の部分が残ったものは採集の対象にしてこなかったのですが、今年は気まぐれに果皮に緑色が残存したアベマキのドングリ(図8-233-1参照)を幾つか採集して、他のドングリといっしょに煮沸してから自然乾燥しました。

 すると、緑色の部分が黄色く変色して、元々茶色だった部分と合体した2色のドングリが誕生しました(図8-233-2参照)。因みに、図8-233-2のように果皮がはっきりと2色になるのは、煮沸前の茶色と緑色のコントラストが強いものに限ります。いろいろと試してみたのですが、茶色の部分が薄茶色のドングリは、乾燥後の緑色の部分との色の違いが不明瞭で、元々単色のものと変わらなくなりました。

 2色のドングリは、まるで壺の口の部分から釉薬が垂れた素焼きの陶器みたいで、単色のドングリには無い独特の味わいがあります。
 欠損のないきれいなドングリだけを選別採集している私にとって、ドングリが樹から落下した時に入る表面のキズはあまり好ましいものではありません。それなのに、同じキズでもこの2色のドングリに入ったものであれば、なぜだか魅力的な模様が付加されたように感じられるから不思議です。美の世界って、ホントに奥が深いですね〜☆