雑記232. 2016.10. 6
“ 群れをなすアベマキのドングリ ”
  関東ではあまり目にすることがないアベマキですが、関西では雑木林や公園、緑地などに幅広く植栽されています。アベマキはクヌギとよく似ていますが、アベマキの葉裏には毛があること、そして樹皮には不規則で激しい凹凸があるのが特徴です。

 アベマキのドングリは、長さが10mmに満たない短い果軸に1〜2個が結実します。普通、樹上でよく目にするのは、枝に1つだけ孤立した果軸に1〜2個が結実した様子(図8-232-2 左側参照)や、枝の特定の箇所に2つの果軸が近接し、3〜4個がかたまって結実した様子(図8-232-2 右側参照)です。

 ところが、先日私の通勤経路にある摂津伊丹廃寺跡で、6個のドングリが群集したアベマキの枝を見つけました(図8-232-3参照)。写真にはドングリが5個しか写っていませんが、実はこの背面にもう1個あるのです。いろんな角度から撮影を試みたのですが、残念ながらどうやっても1枚の写真に5個しか入りませんでした。

 6個が群集したドングリを殻斗ごと枝から取り外したところ、僅か30mmの範囲の枝に、果軸が3本も並んでいました。たかが6個のドングリが群れているだけではないかと思われるかもしれませんが、アベマキではあまり見られないシチュエーションです。

 こんなに果軸が近接していると、大きなドングリなら互いに干渉して、成長が阻害されてしまうものも出てきそうな気がするんですが、この個体のドングリはとても小粒(図8-232-4参照)なので、6個とも無事に成熟できたのでしょう。

 アベマキではほとんど見られないこのシチュエーションも、果軸やドングリの形態がよく似たクヌギではごく普通に目にすることができます。クヌギもアベマキと同じで、1本の果軸に1〜2個が結実しますが、50mm前後の範囲の枝に4〜5本の果軸が並ぶことがあり、しばしば8〜10個のドングリが群集する姿を目撃します(図8-232-5参照)。アベマキとクヌギはドングリの形態だけでなく、樹上における結実状況にも微妙な違いがあるんです。