雑記023. 2010. 9.18
“ ドングリに忍び寄る魔の手 ”
 秋晴れの好天に恵まれたので、久しぶりに御苑までドングリ採集に出掛けてみました。9月の中旬になると毎年のようにここを訪れますが、今年は雰囲気が一変していました。
 驚いたことに苑内の至るところで、ドングリの樹の幹が根元から私の背丈ぐらいの高さまで、すっぽりとビニールシートで覆い隠されていたのです。ビニールの内側には、“カシノキナガキクイムシの燻蒸駆除作業中です” と書かれた紙が貼られており、鼻を近づけると樹脂ボンドを焦がしたような臭いが漂ってきました。恐れていたナラ枯れ
(*)が、とうとう御苑まで浸食し始めたようです。 

 御苑に植栽されているスダジイ、ツブラジイ、ツクバネガシ、マテバシイ、シリブカガシについては、ほとんどの個体がシートで包まれており、ナラ枯れの猛威に愕然としました。特にマテバシイの中には葉っぱが全て枯れたものや、食害が進行して根元から切断されたものが多数見られました。

 幹の直径が1mを超える立派なツブラジイの大木も、ナラ枯れに対しては為す術がなく、葉っぱを茶色く変色させて無残な姿に変わり果てていました。そんな中、苑内で最も数が多いウバメガシだけは、私が見た限りほとんどの個体が外観上は健全な姿を保っていました。

 
 異例の猛暑か、あるいはナラ枯れの影響か定かではありませんが、今年の御苑のドングリの結実状況は極めて悪いように見受けられました。11月にドングリを落とすツクバネガシにも、ほとんど幼果が見られませんでした。例年であれば、今時分はマテバシイのドングリがたくさん見られるはずなのですが、ほとんどの個体で落下していませんでした。

 ナラ枯れについては、具体的な対策が無いため、事後処理で被害の拡大防止に努めている状況です。この災禍が、大泉緑地 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] や服部緑地 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] にまで波及しないことをただ祈るばかりです。
* ナラ枯れとは、病原菌を媒介するカシノナガキクイムシが、ナラやカシ類の樹木に食害侵入することで樹木が枯死する現象です。詳細は、http://cse.ffpri.affrc.go.jp/keiko/hp/naragare_1.html [ (独)森林総合研究所のホームページ ] を参照下さい。