雑記224. 2016. 9. 8
“ 殻斗に変化が現れるのはいつ? ”
昨年の11月、兵庫県三田市にある三田市民病院で、殻斗が激しく波打ったシラカシのドングリ(*)を見つけました(図8-224-1参照)。このドングリを結実した個体では、ほとんどの殻斗がこんなふうに波打っており、成熟したシラカシのドングリとしてはこれまで見たことがない奇妙な形をしていました。
* 雑記201を参照願います。
こんなにも殻斗が激しく波打つ原因については、現在のところ何も判っていませんが、とりあえず成長過程のどの段階でこの兆候が現れるのか知りたくて、今年はこの個体が開花した時からずっと観察を続けてきました。
まずは、6月の開花時期に雌花を観察しましたが、何の変哲もないごく普通の雌花でした(図8-224-1 右下参照)。次に、開花から約2ヶ月が経過した7月の末に幼果を観察しましたが、その時点ではどこにでもある普通の幼果でした(図8-224-2参照)。
ところが、それから1ヶ月後の9月初頃に見ると、どの殻斗にも裾の辺りにたくさんの皺が現れ、ものによっては既に大きく波打っているものもありました。図8-224-3は、図8-224-2と同じ果軸を撮影したものなので、殻斗の変化がよく判ると思います。
一般に、ドングリは小さなうちは縦横に等方的に成長し、その後縦方向に選択的に急伸して成熟する傾向があります。このドングリを観察した9月初頃の時点では、未だ縦横に等方的に成長している途中だったので、殻斗に変化の兆候が現れるのはこの段階であることが明らかになりました。
この現象のトリガーになっているものが、外部からの化学物質だとすれば、この個体に隣接する多くのシラカシにも同様の傾向が現れるはずですが、その様子は全くありませんので、どちらかというと内部的な要因が関与しているのかもしれません。今後、どのように調査を進めていけばいいのか、今のところいいアイデアが浮かびませんが、興味が続く限り気長にやっていきたいと思います。
(追記)
その後の調査で、三田市民病院のシラカシの殻斗が異常に波打つ原因が判りました。詳細は、雑記234を参照願います。