雑記223. 2016. 9. 5
“ 十年ぶりの再会 ”
 7月の中旬に、兵庫県神戸市の森林植物園でイヌブナの6果のドングリを見つけました(*)。その時から、同園で集中的にイヌブナのドングリを調査してきましたが、すでに大半のドングリが落下したと思われる8月末になっても、あらたな多果を見つけることはできませんでした。残念ながら、柳の下に2匹目の泥鰌はいなかったみたいです。
   * 雑記219を参照願います。

 先月末に訪れた時には、イヌブナと入れ替わるように、ごく僅かですがブナのドングリが落下していました。2006年に少量のブナのドングリを採集してから、同じぐらいの時期に何度か同園に足を運んできましたが、一度も新鮮なドングリを目にすることはありませんでした。そんなわけで、今年はブナのドングリと十年ぶりの再会になります。

 この日に採集したブナのドングリは、殻斗が着いた状態のものが全部で14個見つかりました。これまで、ブナのドングリをじっくりと見たことはなかったのですが、よく見るとここのドングリは殻斗が肉厚で、表面に鱗片が密集していました。また、堅果については同種の中でもややサイズが大きめでした(図8-223-2参照)。
 京阪神では、兵庫県の六甲山、大阪府の妙見山、そして滋賀県の生杉でしかブナのドングリを採集したことがありませんが、それらの中で妙見山で採集したものと比較してみると、森林植物園のものの方が立派に見えます(図8-223-3参照)。

 クリと同じように、ブナについてもドングリの形態の個体差は顕著でないと思っていたのですが、どうやら認識を改めなければならないようです。

 ところで、今回見つけたブナのドングリの中に、1つだけ奇妙な形をしたものがありました(図8-223-4参照)。堅果を放出した後に殻斗片が丸まって、まるで小さなウニのような形をしていました。

 殻斗の隙間から中を覗いてみると、2個ある堅果の内の1個は見当たりませんでしたが、ライトを当ててよく見ると、もう1個は殻斗の内側に貼りついていました。取り出してみると、なんと長さが3mmしかない稀にみる極微堅果でした!
これでまた一つ、私のドングリコレクションに奇妙な仲間が加わりました☆