雑記218. 2016. 7. 6
“ こういうところも、そっくりです ”
春になると、前年に開花したマテバシイの幼果が一様に丸く膨らみ始めます。それらの丸く膨らんだ殻斗の脇に、小さな突起物のような形をした殻斗があるのをみなさんはご存じですか?図8-218-1にその例を示しますが、マテバシイやシリブカガシでは決して珍しいものではありません。
これまで、あまり気にしていなかったのですが、マテバシイ属とコナラ属の殻斗が基本的に同質のものである(*)という観点から見直してみると、これらの突起物も両者に共通した構造物であることが分かりました。
* 雑記166、216を参照願います。
マテバシイの殻斗に見られる突起物の先端には、花被片が残留しているものとそうでないものがあります(図8-218-2、図8-218-3参照)。花被片が残留しているということは、突起物のような形をした殻斗の内部に堅果が存在し、残留していないということは、堅果が存在しないことを意味します。
このような形の殻斗の内部に、堅果が存在したりしなかったりという状況は、コナラ属のシラカシでたまに目にする紐状殻斗のそれと酷似しています(図8-218-4参照)。紐状殻斗の内部の堅果の有無は、紐状殻斗を形成する元になった極微の単一雌蕊の雌花が、成長過程で退化消滅したか否かによるものと私は考えています(**)。
** 詳細はセクション3-2-4を参照願います。
たぶん、マテバシイの突起物もシラカシの紐状殻斗と同じものであると考えられますが、未だマテバシイでは突起物のような形の殻斗の中に花柱が残存したのを見たことがないので、はっきりと断言はできません。ただ、この時期の典型的な幼果の殻斗と突起物のような形の殻斗に残された花被片のサイズを比較すると、前者に比べて後者の方が極端に小さいことから、そこに雌花が残存していたとすればおそらく1本の花柱をもつ雌花、すなわち単一雌蕊の雌花だろうと考えています。
余談になりますが、ここ数ヶ月間マテバシイの様々な殻斗を見てまわっていたら、ちょっと変わった葉っぱに出くわしました(図8-218-5参照)。先端が二股になり、各々がきれいに丸味を帯びてハートのような形になった葉っぱです☆
なにか幸運をもたらしてくれそうな感じがしたのに、採取してからひと月近く経ちますが、私の日常で特に変わったことは何も起こりませんでした。残念ながら、これは幸運をもたらす葉っぱでは無かったのかもしれません(変わらぬ平穏な日常こそが、幸せと言えるのかもしれませんが...)。