雑記212. 2016. 5.31
“ 森林植物園のアメリカ区の奥に ”
7〜8年ぐらい前から、京阪神では京都を中心にナラ枯れの被害が散見されるようになり、今では他府県でも至るところで被害にあった樹木を目にするようになりました。京都府立植物園 [ 所在地 : 京都府京都市 ] に植栽されたスカーレットオーク [ 学名 : Quercus coccinea ] も、この災厄から逃れることができず、数年前にあえなく切断されてしまいました。以来、京阪神の植物園や主だった公園で、スカーレットオークを見ることは無いだろうと思っていました。
ところが、先日このHPをご覧になられたAさんから、森林植物園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にスカーレットオークが植栽されていて、昨年僅かながらドングリを採集されたとの情報を入手しました。メールに記載された場所は同園にあるアメリカ区内で、私も以前レッドオークのドングリを採集したところでした。ただ、Aさんのメールによると、スカーレットオークが植栽されているのは、アメリカ区内でレッドオークやピンオークがあるところよりもかなり奥で、私がこれまで一度も足を踏み入れたことがない場所でした(図8-212-3参照)。
情報を頂いてから快晴の日を待って、早速現地を訪問しました。アメリカ区内の奥まで入っていくと、確かにスカーレットオークの和名であるベニガシワの表示がありました(図8-212-4参照)。幹の直径が50cm以上ある立派な樹でしたが、比較的低位置にある葉を見ると、スカーレットオークというより、なんだかレッドオークに近いような形をしていました。
レッドオークやピンオーク、ブラックオーク等は、スカーレットオークと同様に個体間の葉の変異が激しいので、葉を見ただけでこの個体がスカーレットオークではないと言いきれませんが、ちょっと怪しいのは確かです。
さて、スカーレットオークはこの1本だけかと思いきや、実はその奥にも3本ありました。葉はどれも図8-212-2にあるのと同じ形だったので、これら3体についてはスカーレットオークと考えて間違い無さそうです(図8-212-5参照)。
これらの樹にドングリが実るのは、おそらく10月上旬〜中旬頃ではないでしょうか。ベニガシワの表示があったちょっと怪しげな個体も、ドングリを見ればレッドオークかスカーレットオークかはっきりすると思います。
森林植物園には、イノシシやカモシカ等の野生動物も多いので、これらのライバルをさしおいてドングリを拾うことができるかどうか....今からワクワクしています。
今回、貴重な情報を提供して下さったAさんには、あらためて御礼申し上げます。
(補記)
レッドオークやピンオーク、スカーレットオーク等の葉は形態が多様で、互いによく似たものも多いので、葉の形で樹種を識別するのはなかなか難しいです。図8-212-6はレッドオークの葉の形態例ですが、個体間は勿論の事、同じ個体でも裂欠の深さや数が大きく異なるものが見られます。