雑記211. 2016. 5.24
“ ギザギザが有るリングと無いリング ”
 コナラやミズナラのようなコナラ亜属の殻斗は、それらの外観から鱗片の様子がはっきりとわかります。一方、アラカシやシラカシのようなアカガシ亜属の殻斗は、どこに鱗片があるのかよく判りません。
 ドングリ関連の本を見ても、アカガシ亜属はリング状の鱗片と書かれているだけで、具体的にどういう構造になっているのか何も説明がありません。

 そこで、今回はリング状殻斗の鱗片の様子をビジュアルに紹介し、リングの形態に見られる微妙な差異について私なりに考察を試みました。

 アカガシ亜属の殻斗は、細かい点はさておき、どれもリングを積み重ねたような形をしています(図8-211-1参照)。外側には微毛が密生しているので、ただのリングにしか見えませんが、これを一層ずつ解体してその内側から見てみると、実は鱗片の様子がよく判るのです(*)

 図8-211-2は、殻斗のリングを途中から1つ剥がして内側から見たところです。どこからどこまでが単体の鱗片なのか明確に判断できませんが、隣接する鱗片同士が合着して横一列に並んでいる様子が何となく判ります。このように、リング状の鱗片というのは、たくさんの鱗片が横一列に合着して、リングのような形になったものであると私は解釈しています。
* セクション10 ドングリの構造分析を参照願います。

 では、図8-211-1に見られるように、リングの下にギザギザが有るものと無いものとでは、何がどう違うのでしょうか。両者の相違について考察するために、各々の形態についてリングの内側の様子を等倍率で観察してみました(図8-211-3参照)。

 すると、ギザギザが有るものは、縦方向に見られる筋と筋の間隔が広く、なおかつ肉厚で筋の部分が盛り上がっていることが判りました。また、ギザギザが無いものは、縦方向に見られる筋と筋の間隔が狭く、なおかつ肉薄で筋の部分が平坦なことが判りました。

 コナラ亜属の鱗片はどれも先が尖っているので、たぶんリングのギザギザの先端が鱗片の先端に相当するのでしょう。だとすれば、隣接する鱗片の幅が広い場合は、鱗片同士が合着しても、先端部分だけが取り残されてギザギザに見えているのかもしれません。一方、隣接する鱗片の幅が狭い場合は、鱗片の先端部分まで互いに合着してしまうので、ギザギザが目立たないきれいなリングが形成されるのかもしれません。

 ギザギザの有無以外にも、リングには亀裂が入ったものがあります(図8-211-1参照)が、隣接する鱗片同士が合着してリングになるので、合着強度が弱い部分に亀裂が入るのは至極当然の事です。亀裂の有無には、個体差が大きく関与していると思われますが、リングの上部と下部の周囲長に大きな差があるものほど、亀裂が入りやすいと私は考えています。