雑記207. 2016. 4.25
“ ハナガガシのドングリの特徴? ”
 ハナガガシとシラカシのドングリは区別がつかないぐらいよく似ています。ですから、ハナガガシに固有の形態的特徴があるなどとは思ってもみなかったのですが、最近になってハナガガシの堅果に見られるある共通点に気づきました。
  * 同センターのハナガガシについては、雑記181を参照願います。

 図8-207-1のドングリは、植物緑花センター [ 所在地 : 和歌山県岩出市 ] (*)にある複数のハナガガシから採集したものです。いずれも首回りに欠損がない完品揃いです。これを見ると、どれも花柱が外向きに開いておらず、先端の柱頭部分を除くときれいな束になっているのが判ります。
  * 同センターのハナガガシについては、雑記181を参照願います。

 図8-207-2は、ハナガガシのドングリの花柱を実体顕微鏡で拡大撮影したものです。図の左側は植物緑花センター、右側は荒山公園 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] で採集したものです。荒山公園で採集したものも、柱頭部分は僅かに開いていますが、基本的に花柱は束になっています。

 他にも、林試の森公園 [ 所在地:東京都品川区 ] で採集したものや九州に旅行に行った友人が持ち帰ったもの、そしてドングリ関連の図鑑等に掲載されたものにも、同じ特徴が見られます。実は、これがハナガガシのドングリに共通する特徴ではないかと私は考えています。

 一般に、ドングリの花柱の形態は雌花の姿をそのまま踏襲します(図8-207-3、図8-207-4参照)。この事から、ハナガガシの雌花の花柱はドングリと同じように束になっていると考えられます。それを確かめるために、この春植物緑花センターに行ってきました。

 同センターには20本前後のハナガガシが植栽されており、例年3月下旬頃に開花します(図8-207-5参照)。
** オキナワウラジロガシは2〜3月頃に開花します。

 今年3月末には、まだ雄花しか咲いていませんでしたが、4月上旬に再訪した時には、複数の個体で雌花が咲いていました。一部を自宅に持ち帰って実体顕微鏡で観察すると、思った通り雌花の花柱(図8-207-6参照)は束になっており、これでドングリと雌花の両方とも同じであることが確認できました。

 現段階では検体数が少ないので、花柱に見られるこの形態がハナガガシに共通した特徴であると断言はできません。ただ、異なる場所に植栽された複数の個体から採集したドングリの花柱が同じ特徴を有していることから、これが事実である可能性は高いと思われます。
 今後、さらに検体数を増やして確度を高めていくつもりですが、みなさんの中にハナガガシの花柱の形態について情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、一報いただけると助かります。